国王エドワルド

エドワルド

「新しい皇帝、レズンは停戦の実施と食糧の確保を求めている。

かなり帝国の内情は厳しい状態のようだ。」


パエルモ

「我々が呼ばれたのは食糧の確保のためでしょうか?」


エドワルド

「察しが良くて助かる。

パエルモ卿には食糧を用意してもらいたい。

それをドバン帝国に販売する。

恩と金を受け取ることになる訳だ。」


パエルモ

「用意する物量と価格についてはどう致しましょう。」


エドワルド国王が近くにいた側近に合図する。

側近がパエルモ伯爵に書類を渡す。


エドワルド

「用意してもらいたい食糧の一覧だ。

価格も書いてある。

どうだ?」


パエルモ

「8割程度は用意可能だと思います。

ですが、小麦と豆の価格が安過ぎます。

こんな価格で提供しては私が大赤字です。

そうですね、、、

最低限これぐらいにして頂かないと。」


パエルモ伯爵が書類に書き込んで返却した。


側近

「パエルモ卿。

これは欲張り過ぎではございませんか。

高過ぎる。」


パエルモ

「派閥の貴族たちに無理を言って集めるんです。いつもの値段では協力が得られません。多少は色をつけないとこの物量は集められません。

この価格なら2割程度しか用意出来ません。

ご理解を。」


側近

「ふっかけ過ぎだ。」


パエルモ

「短期間に無理矢理集めるんです。

そこを忘れて頂いては困ります。」


パエルモ伯爵がゆずらない。


エドワルド

「パエルモ卿の言うことにも一理ある。

素早さは価値だ。

今から10日で8割を用意出来れば、パエルモ卿の提示した価格で買い取ろう。

ただし、8割を用意出来なければ、こちらが提示した価格で売ってもらう。

それで良いな。」


エドワルド国王がニヤリと笑う。

パエルモ伯爵が苦虫を潰したような顔になる。


パエルモ

「陛下の仰せのままに。」


完全に不満顔のパエルモ伯爵。

側近もニヤニヤしている。


エドワルド

「さて、商人のアキラよ。

お前にも頼みがある。

正確には私の頼みではなく、新皇帝のレズンの頼みなのだがな。」


「なんでしょうか?」


エドワルド

「西側の小国に大量の食糧を売ったらしいな。それを知ったレズンが会いたがっているらしい。

今度の会談に同席してもらいたい。」


僕はちらりとパエルモ伯爵を見る。

軽くうなずくパエルモ伯爵。


「現地集合なら、いいですよ。」


側近

「万が一にも遅れてはまずい。

陛下に同行してもらいたい。」


「陛下に同行?

陛下が停戦の会談に行かれるのですか?」


エドワルド

「その通りだ。

カルマール王から、調停役をリズムリア王国に務めて欲しいとの要請があった。

この大役を果たせるのは私しかいない。」


ん?

調停役を依頼されたのってアーサーさんじゃなかったっけ?


アーサーさんをチラッと見る。

黙っていろと眼が叫んでいる。


エドワルド

「新皇帝レズンの指名だからな。

アキラを連れて行くのは私の役目でもある。

安心しろ。

我が精鋭が護衛につく。

安全な旅が約束されているぞ。」


「遅れませんから、、、」


さすがに何日も一緒に馬車で旅するのは堪えられない。


エドワルド

「何度も言わせないでもらおうか。」


アーサー

「陛下。

アキラは私が責任を持って連れて行きますので、どうか、お任せください。」


エドワルド

「・・・良かろう。

アーサーがそこまで言うのであれば、アーサーに任せよう。」


アーサー

「有難うございます。」


エドワルド

「話は以上だ。

今度の東西ドバンの停戦交渉は世界的な関心事だ。それを我がリズムリア王国がとりまとめたとなれば、その名は世界に轟くであろう。私が前面に立ち指揮をとる以上、失敗はあり得ない。

よいな。」


パエルモ

「はっ。」


僕とパエルモ伯爵は退出した。

そのまま、王都にあるパエルモ伯爵のお屋敷へ。


パエルモ

「大変だったな。」


「そうですね。

パエルモ伯爵は大丈夫なんですか?」


パエルモ

「問題ない。

普通なら、無理なスケジュールだ。

だが、出発前から準備出来たからな。

嫌がったのは、、、ただの芝居だ。」


やっぱり貴族って怖いね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る