謁見

アーサーさんたちと会った翌日。

朝からパエルモ伯爵邸を訪れた。


「・・・以上がアーサーさんから聞いた話です。」


パエルモ

「なるほどな。

出発前に話を聞けて良かったよ。

ありがとう。」


「でも、僕が呼ばれた理由ははっきりしましたけど、パエルモ伯爵が呼ばれた理由はわからないままです。」


パエルモ

「そうでもない。

まず私を呼んだ理由は、アキラに協力を約束させることが1つだろう。

それと、リズムリア王国は食糧が豊かな国だ。今の帝国の状況を考えれば、間違いなく、食糧不足の話題になる。

エドワルド陛下はその時のためにすぐに動かせる食糧を用意したいんだろう。

そのための私、だな。」


パエルモはリズムリア王国の西の玄関口。

そこに食糧を集めて交渉の結果次第ではすぐに動かせるようにしておく、ってことかな。


「でも、それならバレティアでいいんじゃないですか?」


パエルモ

「推測だが、すぐに動かせる食糧が陛下の直轄ではあまり無いんじゃないか。

だから、私の抱えている食糧をあてにしているんだろう。

ザバス。

食糧の在庫の確認と無理のない範囲でパエルモに集めておいてくれ。」


ザバス

「承知致しました。」


「じゃあ、僕は王都で合流しますね。」


パエルモ

「わかった。

では、行ってくる。」


パエルモ伯爵の馬車が走り出した。




言われた通り、僕も食糧を集めておこう。

アカツキ王国、ハンドル群島で集めよう。

前回、グルラさんと一緒に食糧を集めた際は回復薬を使った反則収穫をやったけど、あれは自重したい。

やっぱり農作物は大地の恵み。

バグ技で増やすものじゃない。


ホンダ公爵、ガウル国王、バニル国王。

各地の権力者に協力してもらった。

当然だけど、みんな備蓄はしていた。

それを中心に売ってもらいました。


僕個人が持つには多過ぎるぐらいには集まったよ。

まぁ、ドバン帝国は人口が多いから、これでも足りないんだろうけどね。




そんなことをしている間に数日経ち。


エマ

「アキラさ~ん、

満月亭にパエルモ伯爵がいらっしゃいましたよ。」


エマさんが僕を呼びに来てくれた。


「すぐ行きますね。」


エマさんと一緒に転位システムを使って満月亭へ移動した。


満月亭ではパエルモ伯爵がゆっくりとお茶を飲んでいた。


パエルモ

「すごいな。

王都のお店で呼んだら、パエルモにいたアキラがすぐに来られるのか。」


「詳細は秘密ですけどね。

便利でしょ。」


パエルモ

「便利過ぎて感覚がおかしくなりそうだ。

さてと、

これから私の馬車で一緒に王宮に行く。

謁見のやり方は馬車の中で説明しよう。

基本的には私のマネをしておけば問題ない。

いいな。」


「わかりました。」



それからパエルモ伯爵の馬車で王宮へ。

王宮に到着してからは、パエルモ伯爵の後ろについて歩いていく。

パエルモ伯爵はこの国の重鎮だからね。

堂々としたもんですよ。


案内されたのは小さめの部屋。

公式な会談というより秘密の打合せに使う感じかな。


エドワルド

「パエルモ卿、そしてアキラよ。

よく来てくれた。」


エドワルド国王とその側近たちが正面、アーサーさんは少し離れて座っている。これが関係性を表しているのかな。


パエルモ

「お招き頂き、光栄です。」


パエルモ伯爵が礼をする。

僕も倣って礼をする。


エドワルド

「急な呼び出しに応じてくれたことを感謝する。今日は相談したいことがあってな。

まずは楽にして、座ってくれ。」


パエルモ

「はっ。」


パエルモ伯爵が礼の姿勢を解き、椅子に座る。僕はその横。


エドワルド

「早速本題に入りたい。

実はな、

ドバン帝国で大きな動きがあった。」


パエルモ

「はい。」


エドワルド

「皇帝のレギンが死んだ。

おそらく暗殺だ。

後を継いだのは姪のレズン。

そして、この代替りによってドバン帝国の政策が一変した。」

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