いざパーティー
そして当日。
オルネさんが御者を含めて、馬車を用意してくれた。
ベルフォーム伯爵邸には次から次へと馬車がやってくる。確かにどの馬車もちゃんとしている。そして、その豪華さが貴族のランクを表しているらしい。
衛兵
「ようこそいらっしゃいませ。」
僕
「ご招待有難うございます。」
そう言って招待状を見せる。
慣れた手つきで確認する衛兵。
招待状を返して、
衛兵
「どうぞこちらへ。」
僕も今日はタキシードです。
でも全然似合わないけどね。
案内されたパーティー会場では貴族たちがあちらこちらで談笑している。
知らない人とフリートークなんて、僕には難し過ぎる。
とりあえず飲み物だけもらって、会場のすみっこに。
貴族たちはパーティー慣れしているみたい。
みんな楽しそうに談笑している。
本音かどうかはわからないけど。
僕はすみっこでチビチビお酒を飲んで時間を潰す。
しばらくすると盛大な拍手が起きた。
主役のベルフォーム伯爵とその娘が登場したようだ。
ベルフォーム
「今日は我が娘、カミラの誕生日を祝うために集まってくれて有難う。
今日のパーティーには特別なゲストが来てくれている。
アキラ殿。
こちらへ。」
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ
拍手に促されて、前に歩いて行く。
ベルフォーム伯爵の横に立つと、
ベルフォーム
「知らない方もいらっしゃるかもしれないが、こちらのアキラ殿は、
この若さでAランク商人になった、類い稀なる商才を持つ商人です。
このベルフォームの街でも、いくつもの商会を傘下におさめている大商人です。
領地運営に苦労している者はアドバイスをもらっても良いかもしれないな。
ハッハッハッ。」
ハハハ
つられて会場からも笑い声があがる。
ベルフォーム
「アキラ殿は非常に顔が広く、
アーサー殿下やアカツキ王国のホンダ公爵とも懇意にされていらっしゃる。是非、我々とも懇意にして頂きたいところですな。
アキラ殿からも一言よろしいかな?」
想定通りだね。
挨拶を求められるのは想定して、練習してきたからね。
僕
「本日はお招き頂き誠に有難うございます。
ベルフォーム伯爵閣下の素晴らしい領地運営により作られた美しい街並みに、、、」
ヤバイ。
頭が真っ白になっちゃった。
こんな大勢の人の前でしゃべるなんて、プレッシャーが大き過ぎるよ。
僕
「えっと、、、
あの~~~、
え~~~、
その、、、
美味しい料理、食べます。」
何を言ってるんだ、僕!?
・・・変な空気がパーティー会場に流れた。
ベルフォーム
「・・・アキラ殿の本職は飲食ですからね。
是非、当家の料理人の料理をお楽しみ頂きたい。内陸部ではなかなか食べられない新鮮な海の幸をお召し上がりください。」
僕
「す、すいません。
あまり、その、こういう場は苦手で。」
カミラ
「誰でも苦手なものはございますよ。」
そう言ってにっこり笑ってくれた。
なんか、救われるね。
本格的にパーティーが始まると、次から次へと貴族たちが挨拶に来る。
「どこどこを治める○○男爵です。」
「◇◇子爵です。以後お見知りおきを。」
・・・覚えられるか。
僕は顔や名前を覚えるのは苦手なんだ。
そんな立て続けに挨拶されて覚えられる訳がないでしょ。
更に領地の自慢とかされても、まったくピンとこない。知らない人の知らない街の自慢話を聞かされるって地獄だね。
愛想笑いだけを続けるのが僕の限界です。
コミュニケーション能力ゼロの僕に、単身でパーティーに参加するなんて無理な話だよ。
よし、逃げよう!
体調が悪くなったふりをしよう。
でも、その前に主催者のベルフォーム伯爵へのご挨拶とプレゼントを渡さないと。
それだけは絶対にするようにパエルモ伯爵から釘を刺されている。
残された力を振り絞ろう。
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