ベルフォーム伯爵の思惑
パエルモ
「当たり前のことだが、パーティーに招待するには目的がある。
一般的にパーティーに招待するのは友好関係を築くためだ。
ベルフォーム卿がアキラを招くのも、第一にはアキラと親しくなるためだろう。」
僕
「僕と仲良くなってどうするんですか?」
パエルモ
「ふ~、
いいか、
ベルフォームのテスイラ商会を失脚させる時に、複数の商人に出資しただろ。」
僕
「はい、しました。」
パエルモ
「大商人が中小商人に出資するというのは、一般的には傘下に入れたと考えられるんだ。
そして、今ではアキラが出資した商人たちが躍進して、ベルフォームの経済を牽引している。つまり、ベルフォームの経済に一番影響力を持っているのは傘下の商人たちを束ねるアキラということになるんだ。」
僕
「全然僕は束ねてないですよ。
みんな、好きに商売しているだけです。」
パエルモ
「実情と世間の評価が一致するとは限らん。
少なくとも、
ベルフォームの領主が街の経済を牛耳る男とあったこともない。
しかも、その相手はライバルと評されるパエルモにいる。
領主としては放置出来ん事態だ。
私としては手を打つのが遅いぐらいだと思っている。」
僕
「なるほど、、、
それで、僕はどうすればいいんですか?」
パエルモ
「まずはパーティーでのマナーを覚えろ。
おそらく、ベルフォーム卿に害意はない。
基本的にアキラとの距離を詰めたいだけだ。
マナーを守ってパーティーを楽しめばいい。
・・・ただ、相手は海千山千の貴族だ。
アキラをコントロール下に置きたいという思惑は持っているだろう。迂闊な約束や、弱味を握られるようなことはするなよ。
最悪、まずいと思ったら、体調不良だと言って逃げろ。
後からどうにでもなる。」
僕
「わかりました。」
パエルモ
「パーティーまでまだ時間はある。
今度次男のマーティンの家庭教師にマナーを指導してもらえ。
付け焼き刃でも何もしないよりはマシだ。」
僕
「有難うございます。」
パエルモ
「そうだ。
ベルフォーム卿の子供の誕生日を祝うパーティーだろ。手ぶらで行く訳にもいかないから、プレゼントを用意しておきなさい。」
僕
「何をプレゼントしたらいいんですか?」
パエルモ
「それは自分で考えてくれ。
ただ、用意出来たら見せに来なさい。
問題ないかチェックしよう。」
僕
「有難うございます。」
それから、3回ほどマーティン様と一緒に家庭教師からマナー講習を受けました。
マーティン様、さすが伯爵の息子。
完璧だよ。
それに比べて僕は、、、
一般庶民に貴族のパーティーはハードルが高過ぎるよ。全然うまく出来るイメージがわかない。
一応、衣装やプレゼントはパエルモ伯爵のオーケーをもらいました。
僕は飲食店オーナーだからね。
プレゼントは食べ物でしょ。
ということで、リョーコさんに作ってもらいました。宝石箱のような綺麗な箱にシェービングナイフで南国の果物を花のようにカットして詰め込みました。
これを見た、パエルモ伯爵の妻のアリシア様と娘のタチアナ様が大興奮。
結局、マナー講習などをしてもらったお礼ということで、パエルモ伯爵にもプレゼントしました。
そしてパーティー前日。
僕はベルフォームへ移動した。
せっかくなので出資している商人たちと顔を会わせたりした。
一番仲良くしているのはクラリネ商会のオルネさん。
僕
「オルネさん、
明日、馬車を1台借りられませんか?」
オルネ
「1台ぐらいなら用意出来ると思うけど、
何かあるの?」
僕
「ベルフォーム伯爵からパーティーに招待されてて、馬車で行くのがマナーなんだって。」
オルネ
「ちょっと!
そういう馬車なの。
てっきり荷物用の馬車かと思ったじゃない。
パーティーに行けるような馬車ね、、、
なんとか今から用意するわ。」
僕
「え?
普通の馬車じゃダメなの?」
オルネ
「ダメよ。
誰が乗り合い馬車で貴族のパーティーに行くのよ。ちゃんと豪華な馬車で行くのが当たり前よ。
それにクラリネ商会のマークが入った馬車を使えば、他のアキラさんが出資している商人たちから、私が総攻撃を受けてしまうわよ。」
僕
「そうなの?」
オルネ
「とりあえず、マークを隠したり、飾りをつけたり、今から出来る範囲でやってみるわ。」
僕
「よろしくお願いします。」
オルネさん、ごめんね。
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