小沢裕貴

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今回はマサキ視点です。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


サカーイ。

アカツキ王国中央に位置する大都市だ。


ニノーヘでアイコに占ってもらった結果によると、ここに小沢裕貴がいるらしい。

俺たちのクラスメートだ。


マサキ

「さすがに大都市だな。」


マイ

「そうね。

小沢君を探すのも苦労しそうね。」


マサキ

「まずは冒険者ギルドに行ってみよう。

その次は商人ギルドかな。

それで情報が手に入らなければ、地道に情報収集するしかないね。」





結果から言うと、すぐに情報が入った。

情報が手に入ったのは商人ギルド。

小沢裕貴は商売をしている。

店を持っている、ということだった。


教えてもらった場所を訪ねると、


ヒロキ

「えっ!?

もしかして北条君?

それに、えっと、、、石川さん?

珍しい組合せだな。」


マサキ

「小沢君だね。

元気そうで良かった。」


ヒロキ

「まぁ、店頭で立ち話もなんだし、奥に入ってくれよ。

俺の店だから遠慮はいらないぜ。」


マサキ

「ありがとう。」


ヒロキに連れられて、店の奥へ。

応接室に通されるとお茶を出してくれた。


マサキ

「凄いな。

自分の店を持っているなんて。」


ヒロキ

「軽蔑した?

俺が『奴隷商』をやっていて。」


マサキ

「この世界に来て長いからね。

元の世界の理屈を振り回すつもりはないよ。

純粋に凄いと思ってるよ。」


ヒロキ

「ありがとよ。

運が良かっただけだよ。

それにしても、なんか北条君も印象変わったな。なんて言うか、大人になったって言うのかな?」


マサキ

「そりゃ、多少は成長してるさ。」


ヒロキ

「それにしても、どうして俺のところへ?

偶然通りかかったって感じじゃなかったし。」


マサキは今までの経緯を話した。


ヒロキ

「さすがだね。

クラスメートを探す旅をしているなんて。」


マサキ

「たいした成果はあがってないけどね。」


ヒロキ

「悪いけど、俺は一緒には行けないよ。

小さいながらも店のオーナーをしているからね。店を放り出して旅には出られない。」


マサキ

「そうだな。

もちろん、それでいいよ。

俺も小沢君の生活を破壊したい訳じゃないから。ただ1つだけお願いしてもいいかな?」


ヒロキ

「ん?

何かな?」


マサキ

「もし、クラスメートを見つけたら買って、保護して欲しいんだ。

後で俺が買い取るから。」


ヒロキ

「それぐらいなら、お安いご用だよ。

その時はどうやって連絡したらいい?」


マサキ

「それなら、リズムリア王国のバレティアにいる百田先生に連絡をして欲しい。

少し時間はかかるかもしれないけど、それが一番確実だと思う。」


ヒロキ

「わかった。

まぁ、俺も儲かってるからね。

多少待たされても大丈夫だよ。」


マイ

「奴隷商ってそんなに儲かるの?」


ヒロキ

「俺にはスキルがあるからな。

俺は2人と違って非戦闘職だから、戦闘力は低いけど役に立つスキルは覚えるんだぜ。」


マイ

「どんな職業なの?」


ヒロキ

「高位薬師だ。

勇者ほどインパクトはないけど、役に立つスキルを覚えるんだぜ。」


マサキ

「からかうなよ。」


マサキが苦笑いをする。


マサキ

「でも高位薬師のスキルが奴隷商に役立つのか?」


ヒロキ

「簡単な素材で高性能な回復薬を作れるんだ。怪我をしたり、病気になっていたりする奴隷を安く買って、治療して、高く売る。

しかも治療されたことを恩に感じて、奴隷が従順になる。

うちの奴隷は評判良いんだぜ。」


マサキ

「なるほど。

工夫してるんだな。」



その後、夕食を一緒に食べ、

いろんな話をした。

かなり打ち解けたと思う。


ただ、今後会うことはないだろう。

わかっているクラスメートはセントラル大陸に集中している。サカーイにいるヒロキが奴隷として購入する可能性はかなり低い。


これからセントラル大陸に戻るマサキたちがサカーイに戻ってくることはおそらくない。

一夜限りの関係。

みんな、それを理解しながら口にはしない。


楽しい夜はあっという間に更けていった。

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