極炎鳥ゲリマンダー

翌日。

僕とドラはタカート山脈を目指した。

あくまでも調査が目的のため、結界で気配を隠して飛んで行く。


ドラ

『確かに、ワイバーンがでしゃばってんな。

こんな街の近くにはいなかったからな。』


やはりギルドの情報は確からしい。


そのままワイバーンを無視して進んでいく。

ワイバーンたちを通過すると次はレッドドラゴンたちだ。

本来山頂付近にしかいないはずのレッドドラゴンたちが山の中腹あたりまで降りてきていた。


ドラ

『これも不自然だな。

コイツらは山頂付近に陣取ってたぞ。』


レッドドラゴンも無視。

とりあえず山頂を目指す。



山頂にいたのは大きな鳥だった。

鳥という表現が似つかわしくない。

ドラゴンよりも大きな鳥だ。

それがどっしりと山頂に落ち着いている。


鑑定してみると、

『極炎鳥ゲリマンダー

 凄まじい火力を誇る超大型モンスター。

 羽ばたくだけで周囲を焼き尽くす。

 吐き出す炎は簡単にミスリルを溶かす。

 生態は不明。

 卵を温める時だけ人間の生活圏に近付く。

 卵を守る時は攻撃的になっている。』


なるほど。

原因はこの鳥か。

こいつが山頂に巣を作って他のモンスターを押し出したんだ。

後は卵が羽化するまでどれぐらい日数がかかるかだね。

調べてみよう。


ギロッ!


鳥に睨まれた!?

けっこうで気配を隠していたんだけどバレたみたい。なかなかの察知能力だね。


鳥が大きく胸を膨らませる。

そして、

一気に炎を吐き出す。

白い炎。

凄まじい高熱。

僕は結界で受け止めるけど、周囲の大地が耐えきれずに溶ける。


ドラ

『やってくれたじゃねぇか!』


ドラが巨大化して結界から飛び出す。

鳥もドラの危険性を感じたんだろう。

飛び上がり臨戦態勢だ。

大空を2体の巨大モンスターが飛び交う。


その間に僕は卵の鑑定を済ませる。

羽化まで約560日。

・・・ざっくり1年半。

さすがに、そこまでは待てないな。




ドラの光のブレスと鳥の炎のブレスが交錯する。その余波が周囲を破壊していく。

相手に致命傷を与える威力。

ブレスを直撃させた方が勝ち。

両者がそれを理解している。

互いに牽制している。


先に動いたのはドラだ。

大きく息を吸い込む。

そして、、、

卵を目掛けてブレスのモーションに入る。


気持ちいいほど卑怯。

本気の生死をかけた戦いにクリーンなんてないからね。


慌てた鳥。

ブレスを防ぐには、自分のブレスをぶつけるしかない。

しかし、ドラと卵の間に割って入る時間はない。

鳥はブレスを吐こうとするドラに、ブレスの狙いを定め、無理な体勢から強引にブレスを吐く。


それは、ドラの目論見通りだった。

無理な体勢で強引にブレスを吐いた鳥。

そのブレスを余裕で避けるドラ。


ブレスの準備万端のドラ、

体勢を崩して動けない鳥。


ドラの光のブレスが鳥を撃ち抜く。

凶悪な光の奔流が鳥の巨体を穿つ。

耐えることが出来ず墜落する鳥。


ドゴォォォン!!


轟音とともに地面に落ちる。

そこを狙い澄ましたドラの突撃。


鳥の喉元を喰いちぎる。

完全にトドメを刺した。


ドラ

『まあまあだったな。』


「こりゃ、

レッドドラゴンも逃げ出すよね。」


ドラ

『そうだな。

レッドドラゴンじゃ束になっても勝てねぇよ。』


「これでレッドドラゴンも山頂に戻ってくるかな?」


ドラ

『難しいと思うぞ。

俺と鳥がここで戦ったからな。

強者の気配が残っている間はわざわざ寄りつかないだろうね。』


「その強者の気配って、いつ消えるの?」


ドラ

『さっきの戦闘を見たドラゴンは何年経っても戻らないんじゃないか。

代替わりしないと無理だろ。』


「は~、仕方ないな。

とりあえずロイズさんに報告しよう。

それからの対応はパエルモ伯爵とロイズさんで決めてくれるでしょ。」


ドラ

『あの卵はどうするんだ?』


「とりあえず持って帰るよ。

何に使えるかはわからないけど、放置も出来ないでしょ。」


目玉焼きにしたら何人前出来るだろうね。

いや、しないよ。

もし、の話です。

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