商談よりは得意です

「どういうつもり?」


カルタンゴ

「お前たちには食糧を差し出すって選択肢しかないんだよ。」


周辺にわらわらと武装した連中が集まる。


ガロッソ

「正気か?

Aランク商人から強盗なんてすれば、商人ギルドを全面的に敵に回すことになるぞ。

そうなれば国の経済が破綻するのは目に見えているだろ。」


カルタンゴ

「ふふふ、

状況がわかっていないようだな。

お前たちがここで死ねば、誰もこの事は知らないだろ。」


不敵に笑うカルタンゴ。


ガロッソ

「それでも1国の王かよ。

ただの山賊の方がお似合いだぞ。」


カルタンゴ

「ふん!

私はこの国の王だ!

私のやることはすべて正しいのだ!」


ガロッソ

「アキラ、

あんなのでも国王だ。

いきなり殺すと問題になりかねない。

無力化出来るか?」


「商談よりは得意だよ。」


カルタンゴ

「何をごちゃごちゃ言っている。

お前たち!

やっちまえ!」


カルタンゴの合図で武装した連中が僕らをめがけて殺到する。


ゴン!!


「「「痛てっ!?」」」


最前列の連中が結界に顔面から衝突する。


カルタンゴ

「何をした!?」


僕はそのまま結界で全員囲んでしまう。

そして一ヶ所に集める。


ガン!

ゴン!

ガン!


結界に閉じ込められて暴れる男たち。


カルタンゴ

「なんなんだ、これは!?

すぐに出せ!

出さないと殺すぞ!」


ガロッソ

「本物のバカだな。

脅しが効く状況じゃないだろ。

どれぐらいの間、閉じ込められるんだ?」


「1年でも2年でも。」


カルタンゴたちが凍りつく。


ガロッソ

「とりあえず、すぐに死なれても困る。

水だけでも入れてやってくれ。」


「は~い。」


近くにあった悪趣味な壺に水を満たして結界の中に入れる。


ガロッソ

「よし、これで数日は死なんな。

まずは商人ギルドに通報に行くぞ。」


ガロッソさんと僕はカルタンゴたちをその場に残して、さっさと建物を出た。






商人ギルドは質素な建物だった。

パエルモのギルドとは比べものにならないぐらい小さい。


商人ギルドの中に入ると、受付窓口が3つあるだけというシンプルなつくりだった。


ガロッソさんは空いている窓口に直進。


ガロッソ

「アキラ、ギルドカードを出してくれ。」


僕が指示通りギルドカードを出すと、ガロッソさんは自分のギルドカードと一緒に窓口担当のおばさんに見せた。


ガロッソ

「Aランク商人のアキラと、Bランク商人のガロッソだ。

緊急事態だ。

責任者とすぐに会わせてくれ。」


すごい圧がある。

受付のおばさんが慌てて、


窓口担当

「しょ、少々お待ちください!」


ガタッ ゴン


膝を押さえながら走り出した。




少し待つとさっきのおばさんと知らないおじさんが走ってきた。


おじさん

「お待たせして申し訳ございません。

スキピオ出張所の責任者のニンバスです。

こちらへどうぞ。」


応接室と言うより別室という感じ。

とりあえず個室に通された。


ニンバス

「それで、急ぎの用件とは?」


ガロッソ

「カルタンゴに襲われた。

状況をこれから説明するが、大問題だ。

早急にニンバスさんの上司に対応を相談してもらいたい。」


ニンバス

「わ、わかりました。」


それからガロッソさんがこれまでの状況を簡潔に説明してくれた。


ニンバス

「以前から商人を下に見る傾向はありましたが、これほど愚かとは思いませんでした。

まずはギルド支部へ鳥を飛ばします。

そして、指示を待たずにこちらの出張所は引き払い、関係者一同で退避致します。

後で上の者が状況の確認をさせて頂くと思いますので、その際はご協力をお願い致します。」


ガロッソ

「それはかまわん。」


「なんなら僕からイーロンさんに説明しておきましょうか?」


ニンバス

「イーロンさん?」


ガロッソ

「グランドマスターだ。」


ニンバス

「さ、さすがAランク。

それは助かります。

アキラ様とガロッソ様はこの後どうされるおつもりですか?」


ガロッソ

「我々はこの地域の国々に食糧を売り歩いている最中だ。

あまり時間的な余裕があるわけじゃないんでな。そのまま旅を続けるよ。」


ニンバス

「大丈夫ですか?

カルタンゴの部下が追いかけてくる可能性もございますよ。」


ガロッソ

「心配は無用だ。

ちゃんと対策はある。」


ニンバス

「わかりました。

では、お気をつけて。」

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