食料危機

「ボルトは大丈夫ですか?」


ボルトは僕がワインを仕入れている大陸西部の街だ。リズムリア王国のチリーノでもワインを作っているけど、味が違うんだよね。

ワインに詳しくないけど、チリーノワインは軽くてフルーティーで飲みやすい、ボルトワインは濃厚で複雑な香りがするものが多い。

どっちが良いとかじゃなくて、違いがあるから、どっちも必要って感じ。


トマーシュ

「すまない。

詳細な被害状況まではわからないんだ。」


「今度、様子を見てきます。」


トマーシュ

「気をつけてね。

治安も悪化しているみたいだから。

今後、西ドバンがどんな対応をするかによって、世界情勢は更に変わってくるだろうね。」


「西ドバンって広いでしょ。全部やられた訳じゃないなら、国内で支援出来ないの?」


トマーシュ

「難しいだろうね。

穀倉地帯をスノーデン王国に奪い返されてしまったからね。

元々余裕のある状況じゃなかったんだよ。」


「さすがに飢え死にがいっぱい出るのも嫌ですね。僕に支援出来ないか考えてみます。」


トマーシュ

「そうだね。

少しでも救えるなら救った方がいいね。

ただ、支援のやり方は考えた方がいいよ。

アキラ君が食糧をプレゼントして、浮いたお金で軍備を整えて侵略をするって可能性もあるから。」


「なるほど、、、

そういうこともあるのか。

確かに元の世界でも、そういう話を聞いたことあるな~。」


トマーシュ

「食糧を支援する代わりに権力者からはお金を受け取るようにした方がいいかもね。」


「ちょっと考えてみます。」


その後もトマーシュさんとの勉強会は続き、僕はお礼を言って家に帰った。




食糧支援。

さすがに僕が農場を持っているとは言っても、広域を支援出来るほどの収穫量はない。

僕に収穫量を大きく増やすためのアイデアはある。

実現するには大きな農場と人手がいるね。

誰に協力を頼むかを考えた結果、、、


僕はジャブル大陸のティモンを訪れた。

そう、

百獣会のグルラさん。


「こんにちは。」


グルラ

「おう、久しぶりだな。

おかげで造船所は順調だぞ。

職人も育ってきているから、更に増産も出来そうな勢いだ。」


「そりゃ、良かった。

僕は船には乗らないけど、ジャブル大陸が発展するのは良いことだよね。」


グルラ

「あぁ、そうだな。

それで今日はどうしたんだ?」


「グルラさんに頼みたいことがあって。」


グルラ

「おう、言ってみな。」


「収穫間近の大きな畑とたくさんの人員って用意出来る?」


グルラ

「今の時期なら収穫間近の畑なんていくらでもあるぞ。人も俺が声をかければ100や200ならすぐに集められるぞ。」


「さすが、グルラさん。

実はセントラル大陸西部で食糧不足が発生しててね。

そこに食糧を売ってあげようと思って。」


グルラ

「だが、セントラル大陸の人口は凄いだろう。ここで人を集めて収穫したって、俺たちが食べる分も必要だからな。

すべてをセントラル大陸に持っていかれると困るぞ。」


「その点は大丈夫。

僕に秘策があるから。」


僕がニヤリと笑う。


グルラ

「なんだ秘策って?」


僕は小瓶を出す。


「この薬を収穫作業をしてもらう人たちに持たせます。」


グルラ

「どういう薬なんだ?」


「特殊な回復薬です。

これを収穫したばかりのところに1滴垂らせば、すぐにまた実が復活するんです。」


グルラ

「なっ!?

本当なのか?」


「後で実演しますよ。」


グルラ

「夢のような薬じゃないか。

それさえあれば収穫量を何倍にも増やせる。

売ってくれないか!」


「う~ん。

ちょっと反則過ぎる薬だから、さすがに売れないですね。

自分で取りに行くのは止めませんけど。」


グルラ

「どこにあるんだ?」 


「ダンジョンの100階。」


グルラ

「・・・絶対ムリじゃねぇか。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る