勉強会
別腹亭は順調なスタートが出来た。
初日以降も売上は良好だ。
初日から変わったところもある。
客層だ。
正確に言えば、貴族や商人のご婦人本人がお店に来るようになった。
最初は使用人に買いに行かせたけど、自分でショーケースを見て選びたくなったらしい。
うん、うん、気持ちはわかるよ。
おかげで、1人の客がケーキを選ぶまでの時間が伸びて、回転率は下がったみたいだけど、ケーキを選んでいる時間って、最高に幸せな時間だからね。
十分楽しんでもらいたい。
そんなある日。
今日はコーラル商会に来ている。
目的は『勉強会』だ。
Aランク商人になり、影響力も高まる中、僕が世間知らず過ぎるということで、不定期だけど、トマーシュさんを先生に社会情勢や商人としての知識などを勉強することになった。
と言うか、ガロッソさんから強制された。
僕
「すいません。
トマーシュさんも忙しいのに。」
トマーシュ
「私は大丈夫だよ。
どちらかと言うと、アキラ君の話を聞けるのを楽しみにしているんだよ。」
僕
「え?
僕は教えてもらっているだけなんだけど?」
トマーシュ
「アキラ君は実際に世界中を飛び回っているだろ。生の話を直接聞けるのはとても勉強になるんだよ。私の知識は所詮、知識として知っているだけだからね。」
僕
「僕からしたら、その知識量は羨ましいですけどね。」
トマーシュ
「アキラ君なら、私なんてすぐに追いついて、追い越していくよ。
さて、まずは国内からいこうか。」
僕
「はい。」
トマーシュ
「国内で大きな動きがあったのはベルフォームだね。これはアキラ君は当事者だから内情に詳しいと思うけど、、、
世間的には『ベルフォームの下克上』なんて言われているね。
今までアカツキ王国との交易を牛耳っていたテスイラ商会は大きく後退。
代わって何人もの新進気鋭の商人が出てきた。アカツキ王国との交易は更に広がりを見せそうな状況になっているね。」
僕
「オルネさんのクラリネ商会以外にもいくつかの商人に出資したからね。
今回の商談会で、僕の出資金を元手に躍進したみたいだよ。
今後も数年に一度は商談会をしたいって話になってるね。」
トマーシュ
「ベルフォームの情勢はこれから大きく変わっていくだろうね。今回の商談会で躍進した商人たちも現状で満足はしないだろうから、これから更に競争が激しくなりそうだね。」
僕
「この前、ベルフォームに顔を出したら、みんなやる気満々だったよ。それにデジーマのホンダ公爵も結果に満足してるみたい。
商談会をまた開きたいっておっしゃってたよ。」
トマーシュ
「アキラ君、
関係者全員と関わりがあるって凄いことだよ。おそらく、商人として、ベルフォームに一番影響力を持っているのは、もうアキラ君だと思うよ。」
僕
「僕ですか?
そんなことないと思うけどな~。」
トマーシュ
「もう少し自分の影響力の大きさは自覚した方がいいよ。」
僕
「は~い。」
トマーシュ
「じゃあ、次は国外の話をしようか。
リズムリア王国は経済発展が進んで好調だけど、世界情勢は決して良くないんだ。
特にセントラル大陸西部は今、緊迫した状況になっている。」
僕
「何かあったんですか?」
トマーシュ
「魔族の幹部『氷焉のアルタイル』だよ。
氷焉のアルタイルが暴れたために東西ドバンの戦争が終了したのは覚えているよね?」
僕
「ええ。
西ドバンが兵を引き揚げたんですよね。」
トマーシュ
「その通り。
しかし、アルタイルが暴れ回ったことで田畑への被害が甚大でね。食料危機が目前に迫っているんだ。
現在、ダンジョンで肉を確保して供給量を増やしているけど、なかなか厳しい状況のようだよ。なにせ野菜はそんなにすぐに育たないからね。」
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