いざ 開店

それから、僕はみんなの荷物をそれぞれの部屋に降ろして、店の地下に転移システムを稼働させた。

これでいつでも別腹亭に来られる。


ちなみに、転移システムの使用許可はリョーコさんだけで、残りの見習い4人には存在すらも明かしていない。

いきなり秘密をフルオープンにするつもりはないからね。

地下には食料庫があり、そこまでは4人とも入れる。その奥に転移システムがあり、そこはリョーコさんしか使えない。


家具や日用品などは事前に入れていたから、一応、今日から快適に生活出来るとは思うけど、足りないものもあるかもしれない。

それはおいおい買い足してもらおう。





僕、リョーコさん、見習い4人で晩ごはん。

やっぱり引っ越し当日はそばでしょ。

リィオとフィズに作ってもらった二八蕎麦。

2人ともそば職人じゃないからね。

素人が作るなら、十割蕎麦より二八蕎麦の方が安定して美味しく作れる気がする。


見習い4人は見慣れない蕎麦をパスタのように食べている。


リョーコ

「まったく、まめね~。

ちゃんと引っ越しそばを用意してくるなんて。」


「僕は頼んだだけだから、リィオとフィズが優秀なんだよ。」


リョーコ

「本当に美味しいわ。

それに天ぷら。

山菜の天ぷらなんて元の世界でもなかなか食べられなかったわ。」


「旬の季節に摘んで、マジックバックで保管してあるんだよ。」


天ぷらは王道のえびやキス、それに野菜や山菜を用意。みんなばくばく食べている。


「僕はこれから帰るけど、ちょこちょこ顔を出すから、必要な物があったら言ってください。」


リョーコ

「ありがとう。

明日からキッチンで実際に作ってテストしてみるわ。オーブンの具合も試したいし。

その後、開店日を決めましょ。」


「わかりました。

よろしくお願いしますね。」


食事を終えたら、僕はリターンポイントでパエルモに戻った。





それから、準備を整えて10日後にはオープンを迎えることが出来ました。


基本的には元の世界のケーキ屋さんと同じシステムです。冷たいショーケースから食べたいケーキを選んで、テイクアウトかイートイン。

ケーキの値段はかなり上下に差をつけた。

南国のフルーツとかを使っているケーキは高めの価格。ミルクやバター、小麦粉、卵をメインに作るタイプのお菓子は出来るだけ値段を抑えた。

出来るだけ一般家庭にもスイーツを広げたいからね。


オープン初日はなかなかすごい人数のお客さんが集まった。それほど宣伝活動はしてなかったのに。

メインは貴族や商人の使用人。

テイクアウトで買ってくるように指示されているんだろう。商品の数は指示されているけど、どんな種類があるかを知らないから、

「とりあえず高いのから5種類を各1つ。」

なんて注文もよくあった。


店頭には見習いのうち2人が立ち、接客や会計を担当。

リョーコさんと残りの2人は翌日のケーキをどんどん作っていく。




けっこうストックはしていたけど、夕方には売り切れてしまった。


閉店の看板を出して後片付けをしていると、


男性

「邪魔するよ。」


「ん? イーロンさん。」


イーロン

「順調なスタートのようだね。」


「ありがとうございます。

イーロンさんですか?

うちのお店の情報を広めてくれたのは?」


イーロン

「多少はね。

でも、話題が一人歩きしたよ。

あのグエンが護衛をする店。

あのリズムリア王国の英雄、アーサー様のお気に入り。

そんな情報から、アキラくんの店に期待が高まっていたんだよ。」


「その期待に応えられていたらいいんだけど。」


イーロン

「ケーキは、そう毎日食べるものではないからね。今後のリピート率次第でしょうか。」


「そうですね。

人気店になれるように頑張ります。」


イーロン

「期待していますよ。

私も明日はもっと早く来ます。

私も食べてみたくて仕方ないんですよ。」

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