処罰

ニック

「そのモンスターがこの村じゃ特別な存在だったみたいだな。

俺たちがモンスターを殺したのを見た村人が俺たちから逃げ出したんだ。

普通はモンスターを倒したら、村人に感謝されて親しくなれるんだが、完全に失敗だった。

だから俺たちは方針転換をして、村人たちを脅して従わせようとしたんだ。

そしたら、このざまだ。」


「なるほどね。

ちなみにテスイラ商会の誰が君たちに指示を出したんだ?」


ニック

「ザンキだ。

会長のデューポンの右腕のような存在だ。

Aランク商人アキラの弱味を握れ。それが無理なら、営業妨害をして損害を与えろ。

それが商会の、ザンキの、指示だ。」


「そうか。なるほどね。

なぜ、そのザンキはそんな指示を出したんだ?」


ニック

「詳細はわからん。

会長のデューポンの指示だろうがな。

俺たちは指示に従うだけで、指示の意図を探ったりはしない。」


「話はわかった。

素直に答えたことは評価しよう。

ただ、僕の農場で働くみんなに大怪我をさせた罪は重い。

本当はじわじわ苦しみながら殺そうと思ったけど、即死させてあげるよ。」


ニック

「ま、待ってくれ!

全部話したじゃないか!

頼む! 助けてくれ!」


「だから、苦しまずに殺してあげるって言ってるじゃないか。」


ニック

「なんでもやる!

なんでも言うことを聞きます!

だから、だから!」


「なんでもね~。

じゃあ、少しここで待ってて。

まずは事実関係を確認してくるから。」


さすがに彼らの話を全部鵜呑みにすることは出来ない。嘘は言ってなくても、思い込みや騙されているというパターンもある。

まずはテスイラ商会を調べてみよう。

彼らの処罰はそれからだ。


僕はリターンポイントを使用して満腹亭に戻った。


冒険者風の男

「お、おい!

こんなところに置いていかないでくれ~!」


叫んでも聞く相手はもういない。






僕はコーラル商会に顔を出した。

他の商人の情報を聞くならここが一番だよね。

ガロッソさんがいました。


「こんにちは。

今、少しだけいいですか?」


ガロッソ

「おう。

大丈夫だぞ。

どうしたんだ?」


「実は僕の農場が襲われまして。」


ガロッソ

「大丈夫だったのか?」


「怪我人は出ましたけど、全員治療出来ました。大きな被害は出ずに済みました。

犯人も捕まえたんで、とりあえずは落ち着いています。」


ガロッソ

「そうか。

そりゃ、良かった。

で、そんなタイミングで、ここに来たってことは犯人の情報収集ってところか?」


「テスイラ商会ってご存知ですか?

襲撃犯はそこに雇われている連中でした。」


ガロッソ

「テスイラ商会か。

なかなかの大物だな。」


「さすが。

ご存知なんですね。」


ガロッソ

「あのな~。

もう少し商人としての常識を身につけとけよ。

テスイラ商会はリズムリア王国でも有数の商人だ。ベルフォームを拠点とするBランク商人だぞ。」


「でも、僕は接点ないですよ。

なんで僕を狙ってきたんですか?」


ガロッソ

「ただの想像だが、逆恨みかもな。」


「逆恨み?」


ガロッソ

「そうだ。

テスイラ商会は今、業績が悪化している。

数年前に会長が代替わりして、徐々に売上を落としていたんだが、最近になって一気に悪化してきたんだ。」


「どうしてですか?」


ガロッソ

「もともとアカツキ王国との交易をメインの業務として、発展してきた商会だ。

アカツキ王国からの輸入をほとんど一手に仕入れていたんだ。

それが近年、アカツキ王国とリズムリア王国との取引が増えて、うちみたいに新規参入組が入ってきたんだ。

その結果、アカツキ王国からの輸入品の価格が下がってきたんだ。」


「価格競争が始まったってこと?」


ガロッソ

「その通りだ。

今まではテスイラ商会の言い値で買うしかなかったが、他の業者からも買えるようになってきたからな。

結果、テスイラ商会は大きく利益を失っている。」


「テスイラ商会が不振なのかわかりましたけど、なんで僕に逆恨みするんですか?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る