氷焉のアルタイル

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今回はアルタイル視点です。

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他愛ないな。

いくつかの街を凍らせて回ったが、

弱い。


抵抗らしい抵抗を見せず、すぐに逃げ出す体たらく。最近になって、ようやくまともな防衛をみせるようになってきた。


アルタイル

「よし、移動するぞ。」


側近

「承知しました。

しかし、敵兵の損失は軽微です。

まだまだ余裕もあります。

もう少し兵力を削っても良いのでは?」


アルタイル

「その必要はない。

目的は十分達成しているからな。」


側近

「目的、ですか?」


アルタイル

「そうだ。

人間の強みは繁殖力だ。

いつの間にか数を増やし、数の多さで戦いを挑んでくる。」


側近

「おっしゃる通りです。」


アルタイル

「ボウザーは人間を挑発し、団結をさせた。

エベレストは人間を舐めて、放置した。

それが彼らの敗因だ。

人間を団結させず、数を増やさせない。

そのために私は人間の食糧を狙っているのだ。食べる物がなくなれば人間同士で奪い合うだろう。

そうなれば、人間同士で勝手に殺しあってくれる。」


側近

「なるほど。

さすがはアルタイル様。

同士討ちを狙ってらしたのですね。」


アルタイル

「だから、街の周辺の畑を凍らせていたのだ。街を凍らせているのは目的を悟らせないためのカモフラージュ。

街の人間は食糧を消費してくれる存在だからな。しっかり生き残ってもらうさ。」


側近

「ボウザー様とエベレスト様が亡くなられたエリアの調査はどうしますか?」


アルタイル

「無視しろ。」


側近

「は?」


アルタイル

「わざわざ近寄る必要はないと言っているのだ。」


側近

「し、しかし、よろしいのですか?」


アルタイル

「考えてもみろ。

同じ場所で魔族の幹部が亡くなっているんだ。不自然だろ。

その場所に罠があると考えるのが自然だな。」


側近

「罠ですか?」


アルタイル

「可能性が高いのは強い野生のモンスターが住み着いているパターンだな。

時折、想像を超えるモンスターが発生することはあるからな。

そのモンスターの巣に我々を誘導して、戦わせる。そんなところだろう。

だから、そんな戦略的に意味のない場所で罠が置かれているんだろう。」


側近

「な、なるほど!」


アルタイル

「こちらから近寄らなければ、やつらは何も出来ない。

そして、

私はそろそろ行方をくらませる。

そうすれば、やつらは同じ人間の食糧を奪うために兵を動かすだろう。

食糧を奪うための兵に倫理観などない。

食糧以外も奪い、無法を尽くすだろう。

人間同士の対立は後戻り出来ないほど深刻なものになる、、、

まぁ、すべてが私の筋書き通りに進むとは思っていないがな。」


側近

「アルタイル様の策謀、脱帽です。

では、ご指示通り、一度潜伏しましょう。」


アルタイル

「うむ、

慌てる必要はないのだ。

我々と人間では寿命の長さが全然違う。

なにも短期決戦をする必要など、どこにもないんだからな。」


この後、氷焉のアルタイルたちの行方をドバン帝国軍は見失う。

行方のわからないアルタイルへの警戒だけを続ける日々がやってくるのであった。

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