孤児のその後
パエルモ
「さてと、本題に入ろうか。」
僕
「はい。」
パエルモ
「新しく菓子店をやりたくて、そこに従業員として孤児を使いたいという内容だったな。」
僕
「そうです。
ただ、従業員として雇って終わりじゃなくて、菓子作りの技術を身につけて、世界各地でお店を出してもらおうと思っています。」
タチアナ
「つまり、継続的に人を補充出来るシステムを組みたいということですね。」
タチアナ様は理解が速い。
僕
「そうなんです。
技術を身につけるのにどれぐらいの期間が必要かはまだわからないんだけど、独り立ちすることを前提に雇いたいんだ。」
タチアナ
「今、ふらい屋で働いている子どもたちにはまだ確認を取っていませんが、希望する子どもは多いと思います。」
僕
「そうですか。
なら、進められそうですね。」
パエルモ
「少しいいか。」
僕
「はい。
なんですか?」
パエルモ
「孤児たちを採用するのは待って欲しい。
アキラの店で調理技術を学んで、出店のサポートまで受けられるのはメリットが大き過ぎる。
孤児の方が優遇される状況はかえって孤児を増やすことにつながりかねない。
領主の立場としては賛成できないな。」
僕
「確かに。
孤児の方が優遇されるなら、孤児にしちゃえって親が増えても困りますもんね。
普通に募集をかけるのがいいのかな。」
タチアナ
「そうですね。
孤児を助けるつもりが孤児を増やしては本末転倒ですからね。
ただ、ふらい屋の子どもたちは、接客も馴れていますし、調理技術も多少はあります。
募集への応募は問題ないですよね。」
パエルモ
「もちろん応募することは問題ない。
合格者が全員ふらい屋から、となるとやり過ぎだがな。」
僕
「わかりました。
もう少し準備が整ったら募集してみます。」
パエルモ
「そうしてくれ。」
僕
「そう言えばふらい屋って調子はどうなんですか?」
タチアナ
「順調ですよ。
既に3店舗に増えています。
稼ぎも好調で、孤児院の運営資金と、ふらい屋から独立する時の資金とに回しています。この調子なら持続的な運営が出来そうです。」
僕
「簡単な料理だから、マネするお店なんかも出てくるんじゃないの?」
タチアナ
「既に類似品を作っているお店は出てきています。
ですが、
元祖というネームバリュー、
満腹亭監修という価値、
彼らの創意工夫、
孤児たちが頑張っているというバックボーン、
そういう要素が重なって、競合に負けるということにはなっていません。」
僕
「創意工夫ですか?」
タチアナ
「いろいろなフレーバーを試しているんです。今はマヨネーズとか、ガーリックソルトなんかも人気のようですよ。」
僕
「どんどん発展していくのは良いことだよね。ただ、新しい味を求めるあまり迷走しないようには注意してあげて。」
タチアナ
「迷走ですか?」
僕
「そう。
新しい味、
奇抜な味を求め過ぎて、本来のみんなに美味しく食べてもらうって目的を見失ってしまうことはよくあることなんだ。
手段と目的をはき違えてしまう、って言うのかな。」
タチアナ
「ふらい屋のみんなに話をしておきます。
それに、料理以外でも陥りそうなミスですよね。私も気をつけないといけませんね。」
僕
「タチアナ様は大丈夫だと思いますけど。」
パエルモ
「集中すればするほど、陥りやすい罠だ。
常に、何をしたいのか、を自問自答することは何事においても必要なことだ。
アキラも時々良いことを言うな。」
僕
「時々はよけいですよ。」
そんな会話をしながら本日の会談は終了しました。
いつ、どんな方法で募集をかけるかは、今後検討して、パエルモ伯爵に報告することになりました。
まぁ、あまり大々的に募集せずに終わらせるつもりです。
それでも、かなりの数の応募があるんじゃないかってパエルモ伯爵からは言われたけどね。
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