青木涼子

そのお店は小さな焼き菓子のお店だった。

香りに誘われるまま入店。

お店には焼き菓子が並べられていた。

フィナンシェ

パウンドケーキ

フロランタン

パイ

クッキー

メレンゲ

などなど。


店の中にはいくつか席もあり、紅茶を飲みながら焼き菓子を楽しめるみたい。

このラインナップは異世界人かもしれない。

この世界ではまだまだお菓子は高級品だ。

しかもジプート連邦は食糧事情があまり良くない。そんな場所で、これだけのバリエーションを用意するのは並大抵ではない。

相当の苦労があったと思う。


まずは味の確認からだね。


店員

「いらっしゃいませ。

店内でお召し上がりですか?

それともお持ち帰りですか?」


「店内で食べます。」


店員

「それではお菓子とお飲み物をお選びください。」


「お菓子は全種類1つずつ。

飲み物は紅茶をください。」


店員

「えっ!?

全種類ですか?」


「はい、今用意出来る範囲でいいですよ。」


ちょっと多かったかな。

店員さんに驚かれてしまった。


味は・・・

頑張ってるな~って感じ。

たぶん、この街で入手可能なもので試行錯誤したんだろうね。

なんとか売り物になるレベルまで仕上げている。

小麦粉と卵、ナッツ系はある程度手に入るんだろう。でも、バターは苦労して代替品を使っている感じ。

ドライフルーツも種類が少ないんだろうね。


1つ1つ味わいながら食べてたら、結構時間がかかってしまった。

途中で紅茶のお代わりまでしちゃいました。


僕が食べ終わった頃、

奥からパティシエールらしき女性が出てきた。30歳ぐらいかな?

髪の毛を後ろで束ねた女性だ。

顔の雰囲気は異世界人だ。


女性

「いかがでしたか?」


「え、あ、美味しかったですよ。

限られた材料で工夫されたんだろうなって感じました。」


女性

「スイーツにお詳しいんですね。

これほど一度に食べられた方は初めてですよ。」


「重たくならないように仕上げてあったから、食べられましたよ。」


女性

「量の問題もありますけど、値段もなかなか、安くはないので。」


確かに高い。

僕が使ったお金で高級なコース料理が食べられる。


「お金には多少の余裕があるので。

それよりも、このお菓子を作られたのはあなたですか?」


女性

「はい。

私が作りました。

このお店のパティシエールのリョーコと言います。」


やっぱり、異世界人っぽい名前だ。


「ちなみに専門は焼き菓子ですか?

それとも洋菓子全般作れますか?」


リョーコ

「洋菓子全般作れますよ。

でも、どうして?」


「じゃあ、これを食べて、感想をお聞かせ頂けませんか?」


僕はマジックバックからケーキを2つ取り出した。

典型的なショートケーキ。

たっぷりの生クリームにイチゴが乗っている。スポンジの間にはいくつかのフルーツが細かく入っている。

もう1つはガトーショコラ。

大人な味に仕上がってます。

両方、リィズとフィオに作ってもらったケーキです。


リョーコ

「こ、これは!?」


「僕は定食屋をやってて、そこのシェフに作ってもらっているんだけど、スイーツは専門じゃないんだ。

専門家の意見を聞かせてもらえますか?」


リョーコ

「で、では、、、

いただきます。」


リョーコはショートケーキをパクリ。

続けて数口。

次にガトーショコラ。

こちらも数口食べる。


リョーコ

「とても、とても、美味しいです!

この世界で、こんなに美味しいケーキを食べられるなんて。

信じられません。

・・・夢のようです。」


「リョーコさんは異世界人ですか?」


リョーコ

「ええ、そうよ。

向こうにいた時は青木涼子って名前だったわ。

こっちに来てからはリョーコと名乗っているの。

もしかして、あなたも?」


「僕はアキラです。

同じく異世界人です。

ランタンに異世界人がやっている飲食店があるらしいと聞いて、やってきました。」


リョーコ

「わざわざ来てくれたのね。

ありがとう。

あなたのケーキ、最高だったわ。

とても良い素材をふんだんに使って、丁寧な仕事で仕上げている。

非の打ち所がないわ。」

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