奴隷の開放

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今回はマサキ視点です。

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アカツキ大陸に渡ったのは正解だった。

アカツキ王国の玄関口、デジーマの街でさっそくクラスメートを発見出来た。


石川舞さん。

クラスではそれほど目立つタイプではなかったけれど、もちろん顔は覚えている。

どうやらこの街の商人に買われて、護衛として働かされているみたいだ。


護衛中の彼女をたまたま見かけた。

石川さんも俺を見た時に顔の表情が変わったから、俺の見間違えではないはずだ。



さて、これからどうする?

以前の百田先生たちは奴隷の所有者を襲い、強引に奪い取っていたらしいけど、それはこの世界では犯罪行為になる。

犯罪者として追われながら生活をすることになってしまう。


そう考えると、理想は奴隷として買い取ることだ。奴隷の相場はわからないけど、合法的に奴隷を開放するにはそれしかない。



・・・金が足りないだろうな。

デジーマまでの船賃でほとんど所持金はない。どちらにしても、早々にお金を稼がないといけない状況だ。

この街で働くか、離れた場所にあるダンジョンまで行って稼ぐか。

だが、時間がかかって、その間に石川さんが売られてしまうかもしれない。


せっかく見つけたクラスメートを見捨てる訳にはいかない。

所有者の商人に素直に事情を話して、お金を用意するまで待ってもらおう。

それしかない。




マサキは『カネキ屋』というお店を訪れた。

店主は気の良さそうなおじさんだった。

マサキは素直に事情を説明した。


店主

「それはお困りでしょう。

私も出来る限り力になりますよ。」


マサキ

「ありがとうございます。

良かった。

素直に相談して。」


店主

「ただ、私もお店を預かる身として、店に損はさせられないんです。

私がマイを購入した金額はお支払をお願いしたいのですが、よろしいでしょうか?」


マサキ

「それは、、、当然ですよね。

ただ、今、お金がなくて、腕には自信があるので稼ぐまで待って頂けませんか?」


店主

「では、ジュカーイのダンジョンに行かれてはいかがですか?

あそこなら稼げると思いますよ。」


マサキ

「そうします。

お待ち頂けますか?」


店主

「もちろんです。

私は仲間を思うあなたの気持ちに共感しました。微力ではありますが、協力させてもらいますよ。」


マサキ

「ありがとうございます。」


店主

「では、、、

こちらの書類に署名を頂けますか。

マイを購入するということと、

もう買い手がついていることを示す書類です。

これであなたがジュカーイに行っている間に横から買って連れていかれる心配もございません。」


マサキ

「わかりました。」


出された書類に署名していく。


店主

「これでバッチリです。

お金が貯まりましたら、またお越しください。

お待ちしておりますよ。」


マサキ

「ありがとうございます。

出来るだけ早く戻ってきます。」


店主

「期待してお待ちしております。」


カネキ屋を出ていくマサキ。

見送る店主。


これでいい。

これで、なんの問題もなく開放できる。

少し時間はかかるけど、正しい道を進んでいくって決めたんだ。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


店主

「バカなヤツだ。」


店員

「なかなか腕は立ちそうですし、良い奴隷が手に入りそうですね。」


店主

「頭の悪い冒険者など、いいカモだ。

契約書の中身を読みもしない。

あの男、契約上、私に金を借りてマイの身柄を既に購入して、返済時に連れていけるようになっている。

借金ってのは利息が知らない間に膨らんでいくからな。ジュカーイまで行って戻ってくる時には何倍に膨らんでいるかな。」


店員

「その借金が返済できなければ、あの男も奴隷の仲間入りですね。」


店主

「仲間と合流出来て喜ぶんじゃないか。

ククククッ。」


この世界には金利の制限なんてものはない。

貸す側と借りる側が合意さえすればなんでもOKなのである。

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