目指すもの

アーサー

「まずは、アキラに礼を言わないとな。

お前のおかげで無事に帰って来られた。

感謝している。」


「まぁ、

今回は情報提供しただけだからね。」


パエルモ

「アキラを密偵と間違えて殺そうとするとは愚かだな。」


アーサー

「世間じゃ、私のことをレギンの天敵と言われているが、本当の天敵はアキラだな。」


「やめてくださいよ。

皇帝なんかと関わりたくないですよ。」


アーサー

「だが、新しい魔族の幹部『氷焉のアルタイル』がいる以上、レギンも安易に兵は動かせないだろう。」


パエルモ

「しかし、レギンの気性を考えれば、魔族による損失を他国から奪おうとする可能性もある。」


「内政に励めばいいのに。」


パエルモ

「そう簡単にはいかないんだよ。

内政に力を入れても効果が出るには数年かかる。それに天候次第で一瞬で水の泡となることも珍しくない。」


アーサー

「政治ってのは難しいんだよ。」



パエルモ

「王都に戻った後はどうされるおつもりですか?」


アーサー

「しばらくはゆっくりさせてもらいたいね。

これ以上の手柄はいらん。」


パエルモ

「国王陛下との関係を考えれば、それがよろしいでしょう。」


「王族ってのも大変なんですね。」


アーサー

「まあな。

人気が高くなり過ぎてもダメなんだ。

王様に睨まれちまうからな。

私の目標は人畜無害な王弟と言われることだね。」


パエルモ

「もう無理でしょうな。」


アーサー

「わかっている。

だから、ペネロペも頑張ってくれている。」


「あのお芝居ですか。」


アーサー

「あれも国王陛下との関係を良好に保つための作戦の1つだ。

まぁ、本人としては見てられないがな。」




アーサー

「パエルモ卿には野心はないのか?

今のパエルモ卿ならば、もっと中央で発言力を強められると思うが。」


パエルモ

「中央での駆け引きに興味はございません。

私は領地の発展だけを望んでいます。

領地を発展させ、我が子、孫と繋いでいく。」


アーサー

「領主としては真っ当だな。」


パエルモ

「私の望みなど平凡ですよ。

身の丈をわきまえていますから。」


アーサー

「アキラの望みはなんだ?」


「僕の望みですか?」


パエルモ

「確かに興味はあるな。」


「う~ん、

あんまり考えたこともなかったですけど。」


アーサー

「商人として大成して、大金持ちになりたいとか、貴族になりたいとか。」


「お金は十分あるし、

商人としてもAランクになったし、

貴族にはなりたいとは思わないし。」


パエルモ

「ん???

Aランクの商人になったと聞こえたが?」


「この前、スノーデン王国に行った時になりましたよ。」


パエルモ

「そういう大事なことは早く言ってくれ。

ガロッソには伝えたのか?」


「ん~~~、

まだ言ってないかも。」


パエルモ

「ちゃんとガロッソに今後の対応を相談しなさい。」


「・・・はい。

すいません。」


アーサー

「あのな~、

Aランク商人はリズムリア王国内には1人しかいなかったはずだ。

だから、2人目だな。

この国ナンバー2の商人になったってことだからな。かなり大事だぞ。」


パエルモ

「Bランクは地方都市にはおさまりきらない広域商人だ。国内で見ても、有数の実力者だ。

そして、Aランクになればいくつもの国を股にかけて商売する、国を代表する商人という扱いになる。

Bランクなら地方領主並みの発言力と言われているが、

Aランクは有力貴族や小国の国王並みの発言力を持つ。

私とも対等か、下手をすればアキラの方が強い可能性すらある。

そういう立場だぞ。」


アーサー

「正直、この国でアキラより明らかに上位なのは国王陛下含め5人にも満たないだろうな。

そこら辺の男爵なんかはアキラに敬語の対応になるぞ。」


「貴族にヘコヘコされるのもなんか嫌だな。」


パエルモ

「とにかく、有象無象が寄ってくる可能性がある。今のうちに対策をガロッソとしておくんだ。いいな。」


「はい。」

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