黒熊人

翌朝。

従魔たちも勢ぞろい。

ボゥを除いてだけど。

ボゥはだいたいお店の庭にいてくれる。

最強の番犬なるぬ番牛だ。


とりあえず、ダンジョンまで転移。


「あっ」


転移先はダンジョンの目の前。

つまり、雪だらけ。


ベルが転移した瞬間、ズブズブっと雪に埋まっていった。


ベル

『ぬはっ!? なんだこれは!』


ゲコ

『雪に囲まれたダンジョンだと昨日話していただろ。』


ガウ

『気を抜き過ぎだ。』


誰も心配はしない。

バカだな~ってだけで終了。


ベルが八つ当たり気味に回りに火を放つ。


ベル

『フハハハ、

全て破壊してやっ、』


ペシッ


ベル

『イテッ!?』


頭を押さえてしゃがみこむベル。

自分で頭をナデナデしている。

僕が頭にチョップしたからね。


「環境破壊はダメだよ。

ストレス発散はダンジョンの中でしようか。」


ベル

『クソ~。』


ドラ

『でもよ~、

ダンジョンも上層階だとかえってストレスなんだよな~。』


「まぁね。

今回は夜間も移動しようか。

それならいつもより速いよ。」


リン

『夜は私に任せてよ。』


そんな会話をしながらダンジョンに入ると、妙な気配を感じる。

モンスターじゃない?


黒熊人

「お前たち、何者だ?」


黒熊人

「外から流れ込んだ異常な熱風もお前たちが関係しているのか?」


槍を構えた4人組が出てきた。

見た目は黒い熊みたいな獣人だ。

白熊人の親戚みたいな感じ?

白熊人はモジャモジャでぽっちゃり。

黒熊人は体毛は短く、筋骨隆々。


槍は構えているけど、そこまで敵意は感じない。警戒はしているようだけど。


「すいません。

私はテイマーで、冒険者みたいなものです。

私の従魔が魔法を放ちました。

雪に向かって放ったんです。

敵意はありません。」


黒熊人

「そうか。

お前たちはどこから来たんだ?」


「ノースポートから来ました。」


黒熊人

「海を渡ってきたのか!」


少し警戒がゆるんだ?


黒熊人

「強き人間よ。

まずは族長と話をしてほしい。

ついてきてくれ。」


前2人、後ろ2人。

黒熊人に挟まれて歩いていく。

ダンジョンの中は暖かい。

20度超えってところかな

寒くないのは有難い。


そして、

ダンジョンの中にたくさんの黒熊人がいる。

明らかに生活している様子だ。

干してある洗濯物、

生活感があふれている。


もしかして、ダンジョンの中で生活をしているのか?


黒熊人

「ここだ。入ってくれ。」



低い垂れ幕?カーテン?のようなもので仕切られているだけで、ちゃんとした壁はない。


しばらく待つと、

年寄りっぽい黒熊人が入ってきた。

顔のシワだけで判断している。

なにせ、全員ごりマッチョだし。


族長

「私は族長のゾンだ。

名は?」


「アキラです。」


ゾン

「ノースポートから来たと聞いたが間違いないか?」


「はい。」


ゾン

「確かに従えている魔物から、凄まじい存在感を感じる。

ノースポートにはまだ我々の同胞はいたか?」


「見た目はみなさんとは少し違うけど、いましたよ。」


ゾン

「かつては我々も毛が長かったと聞いている。このダンジョンで生活をするようになって短くなったらしい。」


進化と言うのか、環境への適応と言うのか。


「でも、その毛の短さだと、外では生きられないんじゃ?」


ゾン

「その通りだ。

我々はダンジョンで生きる道を選んだ。

もはや外の寒さには耐えられないだろう。」


確かにダンジョンの中の方が住みやすいかもしれない。

気温は一定。

モンスターも上層階なら弱い。

モンスターの素材も潤沢に手に入る。


黒熊人はモンスターとの戦闘に特化したから、ムキムキになったのかな。

白熊人は寒さに耐えるために皮下脂肪を増やしている感じだと思う。

進化の不思議だね。


ゾン

「我々は強さを最大の価値基準としている。

お前たちは強い。

自由に街を使ってくれ。」


「ここって壁はないんですか?

仕切りは布がヒラヒラしているだけなんだけど。」


ゾン

「壁はない。

いつ、どこでモンスターが発生するかわからないからな。

死角を減らし、すぐに助けに行けるようにしている。」


なるほど、

立っていれば見渡せて、

寝転べば視界を遮れる。

そういう設定なんだね。


ゾン

「ディオ、街を案内しろ。」


呼ばれた大きな黒熊人が歩み出た。


ディオ

「承知。」

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