イーロンの願い

イーロン

「ありがとう。

賢明な判断だと思います。

それと、もう1つ。」


「まだあるんですか?」


イーロン

「仕事の出来る人間は一度に効率良く終わらせるものです。

何度もお会い出来る保証はありませんからね。」


イーロンさんって、なんか自分のペースに持っていくのが上手いな~。

どんどん話が進んでいっちゃうもん。


イーロン

「それでですね。

次の話は単純なお願いです。

しかも、ギルドのグランドマスターという立場ではなく、スノーデン王国王都のギルドマスターとしてのお願いです。

ですので、無理強いもしませんし、お断り頂いても、なんのマイナスもございません。」


「わかりました。

で、どんなお願いなんですか?」


イーロン

「スノーデン王国に新規出店して頂けませんか?」


「えっ?」


イーロン

「スノーデン王国は常に食糧難に苦しんできました。そのため、食事は生きる為に、必要にかられて食べるという状態です。

食べられれば十分。

味などは二の次。

食事を楽しむという余裕がないのです。

アキラさんのお店をきっかけに環境を変えていきたいんです。

穀倉地帯をドバン帝国から取り返した今がチャンスなのです。

お力をお借り出来ませんか。」


「う~ん。

新規出店はすぐには出来ないですよ。

最近デジーマに出店したばかりだから、準備の期間がけっこういりますよ。

スノーデン王国に出店すること自体は問題はないんですけどね。」


イーロン

「当然ですね。

もちろん、準備期間が必要なのは理解しております。

候補地の1つとしてお考え頂ければ幸いです。」


「それぐらいなら。」


イーロン

「ありがとうございます。

それでは、新規出店に向けて動きだそうとお考えになったタイミングでお声かけください。店舗候補のピックアップなどはこちらで行います。ご心配は無用です。」


「わかりました。

そうですね~、、、

料理人の準備が出来て、どんなお店にしたいかが定まったら連絡致します。」


イーロン

「ありがとうございます。

ご連絡をお待ちしております。」





その後、Aランク昇進に必要な手続きを終わらせて、ギルドを出ました。


まずは今日の宿の確保だね。

商人ギルドで紹介してもらった高級ホテル。

紹介状ありなので手続きはスムーズに完了。

晩ごはんまでの時間で散策しよう。


街は活気が足りないかな。

パエルモよりも大きいんだけどね。

食料はほどほどに売ってる。

少し高いし、種類は少ない。

武器、防具、道具なんかは品質も良さそうかな。


そして、マジックストーン屋さん。

これがスノーデン王国の名産品なんだよね。


店主

「いらっしゃい。」


店にはたき火があり、そこで『マグマストーン』という石が売られている。

名前と売り方から考えると、放熱する石なのかな?

わざわざ温めているんだもんね。


店主

「マジックストーンは初めてかい?」


「はい。」


店主

「それなら『スノーストーン』がおすすめだよ。触ってみな。」


店主が僕にスノーストーンを渡してきた。


「冷たい。」


店主

「だろ。

これはスノーデン王国の名産品なんだ。

他では見ないだろ?」


「初めて見ました。」


店主

「そうだろ、そうだろ。

これを南方に持って行けば一攫千金だぞ。」


「そうですね。

で、冷たさは何日続くんですか?」


店主

「スノーデン王国じゃ、年中冷たいぞ。」


「暑い国でも続くといいですね。」


店主の表情からニコニコの営業スマイルが消えた。


店主

「なんだ。冷やかしか。

買う気が無いなら帰ってくれ。」


「買うつもりはありますよ。

面白そうだし。」


店主

「は?

わかってて買うのか?」


「買うつもりだよ。

ちなみにさ、

永久氷石ってどこで取れるの?」


店主

「永久氷石狙いか。

やめときな。

スノーストーンは北部の山間部でいくらでも拾えるが、永久氷石は死の山の山頂付近にしかないらしい。取りに行った冒険者はみんな死んだ。」


よーし、行ってみよう。

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