イーロンの判断

やっぱり頭の良い人は同じようなことを考えるんだね。


「その点については、デジーマのホンダ公爵に技術者の確保を依頼しています。」


イーロン

「デジーマのホンダ公爵!

また、なかなかの大物が動いていますね。

確かにデジーマなら造船の技術は世界トップクラスでしょう。

それと交易の相手はもう決まっているんですか?」


「そこは聞いてないですね。

でも、パウロのガウルさんが協力すればいけるんじゃないかな。

それにサンティのバニルさんも話をしたら協力してくれると思います。」


イーロン

「君はハンドル群島にも顔が広いようだね。

ガウル国王やバニル国王とはどのような関係なのかな?」


「お2人ともよくしてくれてます。

バニルさんには牙の戦士の証をもらいましたし、ガウルさんは戦闘狂だから、2、3発殴ればだいたい協力してくれますよ。」


イーロン

「なるほど。

・・・わかりました。

まずは商人ギルドをジャブル大陸に増やす件については了解しました。

当然だが、そのためには場所も人も資材も必要だ。準備に相応の時間が必要なことを理解して欲しい。」


「グルラさんはたぶん、そこら辺の事情は折り込み済みだと思います。

だからこそ、早い段階で商人ギルドに声をかけようとしたんだと思いますから。」


イーロン

「おそらくそうだろね。

私も同意見です。

まずはグルラ氏に書状を書きます。

届けて頂けますか?」


「いいですけど、すぐには行けませんよ?」


イーロン

「無論です。

それでも普通の冒険者に依頼するよりも早くて確かだと思いますので。

どの程度で届けられますか?」


本気を出せば明日には届けられるけど、さすがにそれを言うとまずいのは僕にもわかるよ。


「1ヵ月あれば。」


イーロン

「十分過ぎる速さです。

宜しくお願いします。」


「わかりました。」


イーロン

「それと、

グルラ氏の依頼とは無関係な話ですが、よろしいでしょうか?」


「はい?」


イーロン

「アキラさん、

Aランクになりませんか?」


「えっ!?

僕がAランク商人に?」


イーロン

「そうです。

実は以前から貴方には注目していたんです。

もしリズムリア王国を訪れた際にはお会いしたいと思っていたんです。」


「ど、どうしてですか?」


イーロン

「商人の武器は情報です。

貴方の名前は何度も耳にしていたんですよ。

そんなアキラさんが自分から訪ねてくれるとは驚きましたよ。」


「凄いですね。

そんなに目立ったつもりはないんだけど。」


イーロン

「フフフ、

ですが、想像以上でしたよ。

リズムリア王国内部での影響力以外に、アカツキ王国、ハンドル群島、ジャブル大陸。

これ程、広範囲に強い影響力を持つアキラさんをBランクに眠らせておくのはもったいないと思いましてね。」


商人ギルドのAランクとBランクはけっこう大きな差がある。

BランクはCMで見るような企業の社長って感じ。なかなか凄いと思うよ。

でも、Aランクは某世界的自動車メーカーの会長みたいな感じ。


たぶん、僕のイメージは間違っていないと思う。僕はただの定食屋のオーナーなんだけどな~。


「僕がAランクになっていいんですか?

だって、飲食店を3店舗やっているだけですよ?」


イーロン

「いいえ。

忘れてらっしゃるようですが、

パエルモ卿との共同事業としてジャムの製造もされていますし、今度はグルラ氏と造船事業も行われているでしょ。

ただ出資しただけかもしれませんが、各地の有力者と共同事業を行っている実績は大きいですよ。」


僕としてはやってるって意識はないんだよね。お金が余り過ぎているから、無理矢理使っているだけって感じだし。


「そういうものなんですね。

まぁ、別にAランクになってもデメリットってないんですよね?」


イーロン

「デメリットは年会費が増えるだけです。」


「わかりました。

お受けします。」


なんか、あっという間にAランクになっちゃいました。

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