レギンの策略

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今回はレギン視点です。

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ようやくカルマールを倒す準備が整った。

長かった。

本来なら、父を殺した翌日には牢屋に入れて、人知れず殺すはずだった。


なのに、逃げ出され、

あげくの果てには『新生ドバン王国』なるものまで作ってしまった。


さっさと殺したかったが、

周囲に足を引っ張られなかなか出兵の準備が進まなかった。



だが、時は満ちた。

所詮は出来損ないのカルマール。

私との兵力差は歴然だ。


愚かにもカルマールは周辺の小国の軍を招き入れた。

誇り高き帝国の領地に他国の軍を招き入れるなど、言語道断。

許されない愚行だ。



だが、私はカルマールの愚行を逆手に取る策を進めている。

アルバンの奪還だ。


これが成功すれば、他国の軍は慌てて逃げ帰るだろう。

他国に頼るなど、

帝国にあるまじき行いをしたカルマール。

そして、その他国に逃げられるカルマール。

求心力は失墜するだろう。




さぁ、開戦だ。

わが帝国軍の総大将はオルテガ。

勇猛な将軍だ。

カルマールに遅れをとることはないだろう。

私は帝都で勝利の報告を待つだけだ。


カルマールたちは籠城。

守りを固めて、防戦の構え。


フッ、私の想定通りだ。

守りを固められると簡単には突破出来ない。

小賢しいカルマールの考えなど手に取るようにわかる。

持久戦に持ち込んで、こちらが疲弊するのを待つつもりだろう。


だが、私の一手で戦況は一変する。


アルバン奪還作戦を始動!

これでカルマールもおしまいだ。



戦場は遠い。

すぐには情報が入ってこない。

もどかしいが仕方あるまい。


ようやく連合軍が守りを任されている砦からこっそり抜け出しているとの情報が入った。


フフフ、慌てているのだろう。

退路を絶たれた連合軍。

追撃されないように偽装しながら、必死に逃げ出しているのだろう。


他愛ないものだ。

連合軍の逃げ出した後の砦を攻略することなど容易い。


これで一気に形勢が傾くぞ!



何故だ!?

何が起きたんだ!?


私は報告を聞いて耳を疑った。

アルバン奪還作戦の失敗。

連合軍の退却は偽装で、守りが薄くなったと思われた砦を攻めた帝国軍は背後から連合軍に襲われ壊滅。


形勢が傾いた。。。

最悪の方向にだ!


おのれ!

アーサー!

何度も! 何度も! 何度も!

私の邪魔をしてくる。

あの男がいなければ、私の覇道を遮るものはなかった。


だがな!

私は磐石の布陣で臨んでいる。

確かに大きな痛手だ。

だが、負けるほどではない。

元々我々の方が兵力は多い。

それに、寄せ集めの連合軍だ。

追撃をかけて、致命的な損害を与えることも出来ないだろう。


戦場から逃げ帰った兵をまとめれば、すぐに補充も出来る。



短期決戦は難しくなったが、長期戦だと負けるということもない。

国力が違うのだ。

徴兵すれば、兵はいくらでもいる。

徴税すれば、資金も用意できる。

カルマールは考えが甘い。

我々が短期決戦しか想定していないと考えているのだろう。

その気になれば何ヵ月でも戦える。

それだけドバン帝国には力があるのだ。


長期戦になればカルマールの経験不足も露呈するだろう。

徐々に離反者も出てくるはずだ。

歴戦の勇将オルテガとは格が違う。


待っていろ、カルマール。

覚悟しろよ、アーサー。

次に私の耳に届く報告は貴様らの敗北だ!



最悪の報告が入った。

まったくの想定外だ。


新たな魔族の幹部『氷焉のアルタイル』。

氷焉のアルタイルがセントラル大陸西部で大暴れしているらしい。


氷の魔法で凍らせて回っているようだ。

死傷者多数。

特に痛手なのは農作物への被害だ。

大量の畑が凍てつき、作物が枯れてしまう被害が出ているらしい。


戦争に最も重要な存在、兵糧。

それが失われれば戦うことは出来ない。


主力を東部に動かしている時に、なんて間の悪い魔族だ。

忌々しいが、魔族への対応が先だろう。

兵を引き上げさせるしかない。


迷っている時間はない。

撤退だ。

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