ペネロペの狙い
ペネロペ
「アーサー様が無事に戻ってこられたのは、国王陛下の深いご配慮と先を見通す眼力、
第二騎士団団長のセージ様の武勇、
そして各国のご支援の賜物です。
現在、ドバン帝国が2つに割れ、世界は大きく動こうとしております。
この難局を乗りきれるのはエドワルド国王陛下しかいらっしゃいません。
アーサー様と私は国王陛下の御判断に従い、この難しい時代に立ち向かっていくつもりです。
今日のお芝居を観て確信しました。
先ほどのお芝居のように、力を合わせればどんな苦難も乗り越えられると。アーサー様が奇跡を起こすにも、皆の力が必要です。
どうか皆さまのお力をお貸しください。」
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ
ペネロペ様の言葉に大きな拍手がよせられる。
その日の夜。
ペネロペ様、僕、ルーシュさんでディナーを頂くことになりました。ルーシュさんはかなり緊張している。
ディナーの場所は満月亭じゃないよ。
他の高級レストラン。
VIP御用達って感じの店構え。
僕らはたぶん一番豪華な部屋に案内された。
ペネロペ
「舞台はいかがでしたか?」
僕
「政治的なメッセージがかなり濃かったですけど、作品としては単純に面白かったですよ。」
ペネロペ
「楽しんで頂けたなら良かったです。」
僕
「でも、世界情勢って、そんなにヤバいんですか?」
ペネロペ
「まだ公にはされていませんが、新生ドバン王国に援軍を出すことが決まりました。
リズムリア王国だけではありません。
いくつもの国が援軍を出す予定です。
ドバンの東西決戦は近そうですね。」
僕
「その東西決戦が終われば落ち着くんですか?」
ペネロペ
「そう単純にはいかないでしょうね。
戦力的には西ドバンが優位に立っています。
しかし、東ドバンは物資が潤沢にあり、他国の支援もあります。
ただリズムリア王国も含めて、他国は戦争の長期化を望んでいます。
ドバン帝国の国力が落ちれば、それだけ安全になりますからね。
理想は東西ドバン同士でもめ続けて、他国に侵略しないことですからね。」
僕
「厄介な国ですね。」
ペネロペ
「ええ。
非常に影響の大きな国ですので、その動向には注意が必要です。」
僕
「でも東ドバンとは友好的な関係なんですよね。東ドバンが勝てばいいんじゃないですか?」
ペネロペ
「う~ん。
そう単純に言えないのが難しいところですね。東ドバンが圧勝して、一気にドバンを統一してしまうと、以前のドバンに戻って、侵略を開始するんじゃないかとの懸念があります。
今のカルマール様はしなくても、その子どもや孫まで友好的とは限りませんから。
でも、東西ドバンが険悪であれば、他に手を出す余裕はありませんからね。」
僕
「なるほどね~。
仲良くするしかない、って状況にしときたいってことですね。」
ペネロペ
「政治家って腹黒い人たちの集まりのようなものですから。
自国、あるいは自分たちの利益しか考えてませんよ。
そして、今回のリズムリア王国からの援軍の代表をアーサー様が務めることになりました。」
僕
「大丈夫なんですか?」
ペネロペ
「ええ。
前回の会議出席よりがは何倍も安全だと思っています。
積極的に前に出て戦うつもりはありませんからね。」
僕
「でも、次から次へとアーサーさんも働かされてますね。」
ペネロペ
「そこが難しいところなのよね。
陛下はアーサー様が邪魔だけど、邪険に出来ない。
だから、危険な任務を押し付けてくる。
そして、その危険な任務を成功させると、更に人気が高まり、陛下からは嫌がられる。
しんどいサイクルが出来上がってしまっているんです。」
僕
「陛下の依頼を断れないの?」
ペネロペ
「そんなことをすれば余計に関係がこじれます。陛下の指示を断れば、謀反を疑われますからね。」
僕
「王様の弟ってのも大変なんですね。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます