迷走する事態

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今回はレギン皇子視点です

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時間を少し遡る。

皇帝を殺した翌朝。

まだ皇帝が殺されたという情報は知られていない。


各国の使者たちは護衛を置いてノコノコやってきた。これで使者たちを議場に閉じ込めることに成功した。

後は兵士たちに任せればいいだろう。


次は国内だ。

特に三男のカルマールが要注意だ。

ヤツは先代皇帝に同調していたからな。

他にも私に反抗的な家臣どもは恭順か死か判断を迫る必要がある。それぞれに兵士たちを向かわせ、身柄を確保するように指示を出した。


これで不穏分子は全て排除できるはずだ。

そうすれば、私の治世が滞りなく始められる。

何も問題はない。

私の采配は完璧だ。




・・・何故だ!?

何故、こうも思い通りにいかない。

各国の使者には逃げられた。

カルマールやダイクーンなど複数の有力者が行方不明。

初動は完全に失敗だ。

カルマールたちの動き出しが早過ぎる。

まさか身内に情報を流している裏切り者がいるのか?

各国の使者どもも城門の外まで逃げられた。




翌日、ようやく各国の使者どもを殺したとの報告が上がってきた。

これでようやく、1つ片付いた。

死亡確認の部隊を派遣する。

遺品などを集めさせよう。

状況次第では、カルマールたちの犯行にすればいい。そうすれば逃げ出したカルマールたちを誰も受け入れないだろう。



遺品が見つからない。

いや、戦闘の痕跡すらない。

どういうことだ?

片付けたとしても痕跡ぐらいは残るだろう。

暗部が嘘をついている?

なんの為に?

30人送り出して、6人しか帰ってこなかった。敵前逃亡したのか?それを誤魔化す為の虚偽の報告か?

とにかく、各国の使者たちに逃げられた可能性が高い。今更追撃部隊を編成しても間に合わないだろう。

くそっ! 無能どもが!



更に許せない出来事が起きた。

カルマールだ。

宰相のダイクーンと共謀し、

私の父親殺しの罪を騒ぎ立て、

帝国東部に勢力を拡大し始めた。

各地が混乱しているのに乗じて、幾つかの拠点を奪取された。


その上、我が帝国の領地の中に

『新生ドバン王国』

などという国を建国宣言してしまった。

我が帝国の5分の1ほどの領地を占拠している。

なんということだ!

愚かなカルマールを早々に葬らねばならない。



更にスノーデン王国までもが侵攻してきた。

北部の穀倉地帯を取り戻す為に兵を動かしてきたのだ。スノーデン王国軍の先制攻撃により、幾つかの拠点を奪われた。援軍を送り、なんとか膠着状態に持ち込んだが、穀倉地帯の半分は奪われた。

あの穀倉地帯を失えば我が帝国の食糧事情が大幅に悪化する。カルマールを討伐するにも兵糧が足りないという事態になりかねない。


北と東の混乱。

そこにまた問題だ。

西側の小国群の幾つかの国がカルマールの流言飛語に踊らされ、反抗的な行動に出てきた。

軍を出し、すぐに鎮圧したが、政情不安のため、兵を引き上げさせることは出来ない。

兵が足りない。

兵糧が足りない。



どこもかしこも好き勝手に動きやがって!

私の帝国だぞ!

誰にも好きにはさせん!



東部にも更に問題が起きた。

ジプート連邦やリズムリア王国などがカルマールの支援を行いだした。

これは非常に厄介だ。

特にジプート連邦が厄介だ。

あの国とは広範囲で国境を接する。

もし南部から攻撃を受けると大打撃になる。

非常時に備えて、兵を駐留させる必要が出てきた。


兵力不足。

兵糧不足。

どちらも深刻だ。

なんとかしてかき集めようとするがなかなか集まらない。そして、軍備を整えるには金がいる。

財政的にも苦しくなってきた。


ドバン帝国の領主の中で、裕福な領主は主に東側に多い。魔族による被害も少ないし、密かに他国と貿易を行っていたりするからだ。だが裕福な東側貴族がカルマールの支持母体になっている。



くそっ!

くそっ!

何故、局面を打開出来ない。


どうしてだ!?

誰かが私の邪魔をしているとしか思えない。

邪魔者は全て排除だ。

誰も邪魔しなければ私には世界を統一するだけの力がある。

そう、私は最高の皇帝なのだから!

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