レギン皇子の野望

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今回はレギン皇子視点です

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時間を少し遡る。


レギン

「父上にも困ったものだ。」


側近たちを前にため息をつくレギン皇子。

野心家で帝国がすべての頂点に立つべきだと考えている。

他国に求めるのは隷属か支配かだ。

そう教えられて育ってきた。


なのに、、、

そう教えてきた父上、皇帝が手のひらを返した。他国との融和などという戯れ言を言い出した。

年齢のせいか、弱気になったらしい。

確かにノルマン奪還作戦の失敗は大きな痛手だった。

だが、だからこそ、帝国に従わない愚か者どもから奪い取らねばならないのだ。


だが、何度説得を試みてもダメだった。

頑なに融和路線を譲らない。

老いとはここまで判断力を奪うものなのか。

嘆かわしい。



ついに父上が各国の使者を招いて会議を行うと言い出した。愚かなことだ。

長年の対立がそう簡単に解消するとも思えない。ムダな労力だ。

だが、そろそろ父上には帝位を降りて頂かないとまずいかもしれない。誤った判断を繰り返されれば、私が皇帝になった時にマイナスからのスタートになってしまう。



そして、決定的な報告が入った。

スノーデン王国から奪った穀倉地帯をスノーデン王国との共同開発地帯にするつもりらしい。開墾をさらに進め、両国で収穫を分けあう。友好のしるしとするつもりらしい。


なんという愚挙!

帝国の栄光の歴史に泥を塗る妄動!

もはや父上は正常な判断が出来ないようだ。

一刻の猶予もない。

明日にはこのような愚かなことを発表されてしまう。




晩餐会の夜。

レギン皇子は皇帝の私室を訪れた。


レギン

「父上、考えを改めて頂けませんか。」


皇帝

「くどいぞ。

帝国の国力回復のためには必要な措置だ。」


レギン

「国力回復を言いながら、重要な穀倉地帯を半分譲るおつもりですか。」


皇帝

「各国との関係改善には必要な痛みだ。

もうこの話は終わりだ。」


レギン

「・・・そうですね。

終わりにしましょう。」


レギン皇子の合図に武装した騎士たちが部屋に突入してくる。


皇帝

「なんのつもりだ?」


レギン

「残念ながら、皇帝陛下は会議のためにやって来た他国が放った刺客に殺されてしまうのです。」


皇帝

「レギン。

お前は視野が狭過ぎる。

皇帝の器ではない。」


レギン

「残念です。

もはや父上の眼は何も見えていない。

私は過去最高の皇帝となるでしょう。

やれ。」


騎士が斬りかかる。

皇帝は剣を手に取り、応戦。

年齢を感じさせない鋭い動き。

2人の騎士があっさりと斬り伏せられた。


皇帝

「甘く見るなよ。

まだ、そう易々とは負けん。」


レギン

「ちっ!

さすがです。

数で押し潰せ。」


皇帝は何人もの騎士を相手に一歩も退かない。その力は騎士たちを圧倒する。

しかし、徐々に動きにキレが失くなり、息があがってくる。


レギン

「父上、老いましたな。」


皇帝

「ぜー、ぜー、ぜー、

残念ながらここまで、のようだ。

ぜー、ぜー、

だが、お前は、真の皇帝に、なることは叶わん!

ぜー、ぜー

自らの不徳を悔やめ!」


皇帝は自らの胸に短刀を突き刺す。

そして、そのまま前のめりに倒れこむ。


皇帝の体が一瞬輝き、その光は消えた。


レギン

「最後まで愚かな。。。

私こそが皇帝の中の皇帝、真の皇帝と呼ぶに相応しい存在だ。


・・・夜明けとともに動く。

各国の使者どもは拘束しろ。

皇帝殺しの犯人として後日処刑する。

それと、先代皇帝の側近どもも拘束しろ。

私に忠誠を誓うなら良い。

私に従わないなら殺す。

夜明けとともに一気に動く。

各員、配置について用意をしておけ。」


レギン皇子、いや、レギン皇帝の指示のもと、部下たちが動き出す。



これでいい。

ようやく私の時代が来たのだ。

父はもはや老害となっていた。

私が栄光ある帝国の新しい時代を切り開くのだ。

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