皇帝の役目

次々に誉めていく。


皇帝

「ベルン王国の武器が最近良くなっていると聞いている。何かあったのか?」


ベルン王国の使者

「我が国を代表するガンズ工房が非常に好調でして。

なんでも、棟梁のガンズが弟子たちの前で生涯最高の剣を作ったんです。それが良い刺激になったようです。」


皇帝

「あのガンズ工房のガンズの最高傑作か。

是非、見てみたいな。」


ガンズさんってやっぱり有名なんだ。

その最高傑作は僕が持ってるんだけどね。



皇帝

「スノーデン王国の木材は丈夫だと評判だ。国交が正常化したあかつきには、是非輸入したいと考えている。」


スノーデン王国の使者

「スノーデン王国の民は木材同様、粘り強く折れることはない。穀倉地帯を取り返すまでいかなる交渉にも折れるつもりはない。」


皇帝

「その言葉、胸に刻んだ。

だが、共に未来を切り開きたいという私の気持ちに偽りはない。

それだけは理解してほしい。」



う~ん。

明日の会議は難航しそうだね。

やっぱり侵略国が領地も返さずに仲良くしようと言っても、了承は得られないだろう。


帝国はどうやって妥協点を見つけるつもりなんだろう?


その後もこんな感じで晩餐会は終了した。

皇帝としては各国との関係改善を目指したいんだろうけど、そう簡単な話じゃないみたい。ちょっと誉めたぐらいで話がまとまる訳ないよね。




自室に戻った後。


アーサー

「ふ~、疲れたな。」


セージ

「皇帝の本気を見ましたね。

明日はなかなか難しい会議になりそうですね。」


アーサー

「そうだな。

こちらの想像よりも踏み込んでくるかもしれないな。」


セージ

「各国の判断をよく見極める必要がありますね。」



コンコンコンコン


騎士

「カルマール様がお越しです。

どうなさいますか?」


アーサー

「お通しせよ。」



アーサー

「熱心だな。」


カルマール

「皇帝陛下のお気持ちは今日の晩餐会で伝わったかと思います。」


アーサー

「今までの帝国からは考えられない方針転換だが、少なくとも当面の和平を皇帝が求めていることは理解出来たよ。」


カルマール

「では、何卒、ご賛同を。」


アーサー

「それとこれとは話が別だ。

スノーデン王国の頑なな姿勢も見えた。

我々が早々に帝国になびけば、今まで反帝国で一致していた各国の足並みが乱れる。

各国の足並みが乱れたところを帝国に各個撃破されれば、帝国の思うつぼだからな。」


カルマール

「そんなつもりはございません。」


アーサー

「こうして各国の切り崩しに動いているのはカルマール殿だけではないでしょう。

我々の足並みが乱れれば、帝国にとっては有利ですからね。」


カルマール

「我々が動いているのは和平成立の為です。決して侵略を行うためではございません。

もちろん、今までの対立があるので易々とは信じられないとは思いますが、、、」


アーサー

「皇帝やカルマール殿の熱意は感じている。だが、それは愛国心からくるものだ。

決して平和を愛するからの和平ではない。

帝国の利益のためには今は戦争をしたくない、というところだ。

もし、戦争する方が利益になる理由が出てくれば、すぐに手のひらを返すだろう。」


カルマール

「・・・帝国は傷ついております。

5年や10年では回復出来ないほどに。

数十年単位での停戦は必要だと考えております。その考えは変わりません。」


アーサー

「口ではなんとでも言えるぞ。

スノーデン王国への対応が帝国の本質だと考えている。」


カルマール

「でしたら、ご安心ください。

明日、皇帝陛下はスノーデン王国に対して、大きく歩み寄る予定です。

内容は明かせませんが、我々の本質を見て頂けると思います。」


アーサー

「ほぅ、では、明日の会議を楽しみにしておこう。そこで判断をさしてもらおう。」


カルマール

「ご英断を期待しております。」


「えっ!?」


3人の視線が僕に集まる。


アーサー

「どうしたんだ?」


「あ、え~っと、皇帝死んじゃったかも。」

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