勤勉な皇子

カルマール

「バレティアとアルバンの中間地点にリズムリア王国の砦を築いて頂いても構いません。

我々に侵攻の意思がないことを確認できるでしょう。」


アルバンは帝国側の国境の街、

バレティアはリズムリア王国の国境の街、

その中間地点にリズムリア王国が砦を作るのは、帝国にとってはかなり不利益なはず。


アーサー

「ほ~、

いきなり大きく譲歩されますね。

狙いはなんですか?

逆に気持ち悪いですよ。」


カルマール

「会議において帝国の和平案に賛同して頂きたい。

今回、多数の国に参加頂いておりますが、発言力が大きいのはリズムリア王国、ジプート連邦、スノーデン王国、の3ヵ国だと考えております。」


アーサー

「ジプート連邦は南の大国、

スノーデン王国は北の大国、

だが、我々は東の小国だ。

そこまでの発言力はないだろう。」


カルマール

「いいえ、

私はこの会議に参加した国の中では二番目に発言力があると考えております。

ドバン帝国との戦闘回数の一番多い国ですから。」


カルマールさんはセージさんの方をチラリと見る。


アーサー

「なるほど、、、

何度も帝国と戦っている我が国が賛成すれば、他の国は反対しにくい。

それに武器製造が得意なベルン王国や、ダンジョンのあるフラメル王国は輸出のチャンスでもある。反対しない可能性が高い。

ジプート連邦はそこまで帝国と争っていないし、首長たちの意見がなかなかまとまらない国だ。ある意味、無視出来る。

おそらく強硬に反対するであろうスノーデン王国を孤立させるのが狙いか。」


カルマール

「ご明察の通りです。

出来ればスノーデン王国とも穏便に話し合いで解決したいと考えております。」


アーサー

「奪い取った穀倉地帯を還せば、穏便に解決出来ると思うがな。」


カルマール

「我が国の国力回復が急務です。

穀倉地帯を手放せば、それは叶いません。

なにより、そこまでの譲歩は国内の反対がより一層強まってしまいます。」


アーサー

「身勝手な話だな。

皇帝はその反対勢力を抑え込めるのか?

和平を結んだが、反対勢力が攻めてきたとなれば、我々としては意味がないのだが。」


カルマール

「皇帝陛下の決定は絶大です。

それに反して兵を動かしては周囲の賛同は得られません。」


アーサー

「だが、皇帝は高齢だ。

皇位継承するレギン皇子は鷹派として有名だろ。間違いなく反対勢力なのではないか?

皇帝そのものが代わればもはや反対勢力ですらなくなるだろう。」


カルマール

「・・・そのためにも早々に話をまとめ、既成事実を作る必要があるんです。」


図星みたい。

皇帝が代替わりする前に話をまとめたいらしい。


アーサー

「なるほど。

状況はわかった。

我々も別に帝国と争いたい訳ではない。

だが、帝国の独りよがりに付き合うつもりもない。そちらの提示する内容を精査し、それから対応を決める。

それだけだ。」


カルマール

「私はこの度の皇帝陛下の英断を無駄にしたくありません。帝国の臣民の生活を守るためにはそれしか手はないんです。

何卒、宜しくお願い致します。」


そう言って、カルマールさんは退室した。




アーサー

「状況が見えてきたな。」


セージ

「そうですね。

ですが、レギン皇子は鷹派の代表格。

それに軍部もかなり掌握してきているとの情報もございます。

現役皇帝と次代の皇帝の争い。

今回の会議はなかなか厄介なことになりそうですね。」


アーサー

「ああ。

一筋縄にはいかないだろうな。

だが、レギン皇子が失脚しない限り、いずれは対立関係に戻るだろう。

それならば、今回の会議で他国との関係を悪化させるメリットはない。」


セージ

「確かに。

帝国の提案に早々に賛同すればスノーデン王国との関係悪化につながるでしょう。

慎重に対応すべきかと。」


アーサー

「カルマール。

このように動けば、後々レギン皇子に粛清されるだろうに、、、

それでも国民を守ろうとする意思には敬意を表するよ。

ただ、賛同するかは別の話だな。

私もリズムリア王国の民を守らねばならないのでね。」

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