深夜の来訪者

2日経ちました。

何も起きない。

暇です。


こういう場合、無用なトラブルを避けるため、また襲われるリスクを回避するため、無駄に出歩かないのが当たり前らしい。


護衛の騎士たちが終始、警戒にあたり、食事なんかも、まずはアーサーさんの食事の毒見をしてから食べ始めるので熱々が食べられない。



そして、アーサーさんの部屋でアーサーさんとセージさんと僕。

3人で鍋を食べている。


「護衛って大変なんですね。

ゆっくりご飯も食べられないし。」


アーサー

「だからと言って私の部屋で持ち込んだ食事を食べるのはどうなんだ?」


「なら、あげませんよ。」


アーサー

「この匂いを嗅ぎながら食べられないのは拷問だぞ。

私もドバン帝国の用意した食事は毒見をしてからだから食べた気がしないんだ。」


セージ

「しかし、敵地ど真ん中でゆっくりもつ鍋を食べられるとは思わなかったな。

とても旨い。」


「良いモツを丁寧に処理しているからね。

それにスープも美味しいし。」


アーサー

「確かに止まらなくなる味だ。」


セージ

「他の騎士たちにも何か食わせてやりたいんだが、何かあるか?

もちろん、代金は割増で払う。」


「大丈夫ですよ。

この前に作ったトンカツと唐揚げがあるから、みんなに差し入れするよ。

代金はペネロペさんに請求しときます。」


アーサー

「結局、それ、私だからな。」


「ケチ臭いこと言わないでくださいよ。」


アーサー

「払わんとは言ってないだろ。

みんなに食わせてやってくれ。」


話している間も3人の箸は止まらない。

やっぱりもつ鍋はサイコーです。


コンコンコン


騎士

「失礼致します。

ドバン帝国、第3皇子、カルマール様がいらっしゃいました。

どう致しますか?」


アーサー

「・・・わかった。

お待たせする訳にもいかないな。

お通ししろ。」


僕は慌ててお鍋セットをマジックバックにしまう。まだ食べ足りないけどね。


入ってきたのは、アーサーより少し年上の男性。今の紹介を聞く限り、皇帝の子どもなんだろうね。


カルマール

「夜分に失礼致します。

第3皇子のカルマールと申します。」


アーサー

「はじめまして。

リズムリア王国のアーサーです。

突然の訪問、何かございましたか?」


カルマール

「どうしてもお耳に入れたい話がございます。人払いをお願い致します。」


アーサー

「私は臆病でね。

ドバン帝国の皇子と1対1で会うことは避けたい。こちらの2人は同席させてもらいたい。信頼出来る。」


カルマール

「承知しました。」


アーサー

「それで、話というのはなんだ?」


カルマール

「まず今回の会議の目的と帝国の状況をご説明させて頂きたいです。」


アーサー

「聞かせてください。」


カルマール

「今回の会議を罠、策略と警戒されているかもしれませんが、皇帝陛下は本気で各国との和平を望んでらっしゃいます。」


アーサー

「今までは侵略して奪い取るのが帝国の姿勢だった。急な方針転換の理由はなんだ?」


カルマール

「ノルマン奪還作戦の失敗です。

魔族の幹部、不動のエベレスト討伐に失敗し、連合軍は瓦解。大変な損害が出ました。

このままでは、国民は困窮し、帝国全土に混乱が生じることを陛下は危惧されています。

そのため、各国との関係を修復し、国力の回復に集中したい、というのが陛下のお考えです。」


アーサー

「なるほど。

話の筋は通る。

各国の共感を得られるかは別だがな。」


カルマール

「そうですね。

なかなか共感を得られないのはわかっております。ですが、双方にとってメリットのある提案だと考えております。」


セージ

「帝国が国力を回復させたら再び攻めてくるのであれば、それを黙って待つことをメリットとは言わないぞ。」


カルマール

「バレティアの巨人のご意見、

当然の懸念と考えております。」


セージさんの二つ名って『バレティアの巨人』なんだ。

カッコいいね。

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