ペネロペさんのお願い

ジャブル大陸から戻ってしばらく経ちました。チーランさんも慣れてきたみたい。

エミルさんが色々教えてくれてます。


平日は厨房でリィズとフィオと一緒に働き、休みにはモルトさんも呼んで、料理研究会を開催。

その日の夜は凄かったよ。

食べきれなかった物はマジックバックへ。


料理人たちは互いに刺激しあっているみたい。まったく違うルーツを持つ料理人たちが互いに技術や考え方を交流させている。僕も参加させてもらってます。4人ほどの技術は無いけど、元の世界の知識があるからね。少しでも相乗効果になればいいかなって思ってる。

まぁ、

単純に楽しいってことの方が大きいけどね。




そんなある日。

ペネロペさんから来て欲しいと連絡が入りました。


ペネロペさんはアーサーさんの妻。

リズムリア王国の王様の弟の妻だから、かなり偉い人だよ。

アーサーさんと一緒に満月亭に何度も来てくれている。

気さくな美人さんだ。

アーサーさんより断然いい人。


王宮のペネロペさんのお部屋に通される。


ペネロペ

「ようこそお越しくださいました。

急な呼び出しに応じて頂き、誠に有難うございます。」


「あ、いえ、大丈夫です。」


ペネロペ

「みんな、少し席を外してくださる。」


侍女たちが部屋を出ていく。

残されたのは僕とペネロペさんだけ。

なんか緊張してしまう。


ペネロペ

「ごめんなさいね。

かなり内密な話ですので。」


「どんな話ですか?」


ペネロペ

「今からの話はあまり口外しないようにお願い致します。」


僕はこくりと頷く。


ペネロペ

「実は我が夫、アーサーがドバン帝国に向かっています。」


「えっ!?」


ドバン帝国とリズムリア王国は仲が悪い。

以前もドバン帝国がリズムリア王国に侵攻し、リズムリア王国が返り討ちにするという事態もあった。


ペネロペ

「ドバン帝国から会談の要請があったんです。リズムリア王国だけではなく、セントラル大陸西部の各国を招待しているようです。」


「じゃあ、その招待に応えるかたちでアーサーさんがドバン帝国に向かったってことですか?」


ペネロペ

「その通りです。

今回は秘密裏に行われる会談の為、少数の護衛しか連れず、ドバン帝国に向かっているんです。」


「でも、向こうから会談を申し込んできたんでしょ。特に危険は無いんじゃないですか?」


ペネロペ

「そうとは言えません。

ドバン帝国との対立は根深いものです。

この会談そのものが罠かもしれません。」


話の流れはわかった。

ペネロペさんも不安なんだね。

そりゃ、夫が敵国に行ってたら内心ヒヤヒヤだよね。


「でも、そんなに短絡的なこともしないでしょう。相手に大義名分を与えるだけだし。」


ペネロペ

「手段は単純な暗殺だけではございません。例えば、拷問して不利な条約を結ばせるとか、拉致して交渉のカードにするとか、、、」


ペネロペさんの瞳からポロポロと涙がこぼれる。


ペネロペ

「失礼しました。」


ペネロペさんはサッと涙を拭く。


ペネロペ

「アキラ様、

無理を承知でお願い致します。

我が夫、アーサーが無事に帰って来られるようにお力添えをお願い出来ませんでしょうか。何卒、、、」


「え、あ、その、僕、あんまり政治的な介入はしてなくて、、、」


美人のペネロペさんが涙を流しながら頼んでくるんだよ。そりゃ、しどろもどろになっちゃうよ。


ペネロペ

「もちろん、ご無理を申しているのは重々承知しています。表立って行動しなくてかまいません。いつもそばにいなくてもかまいません。ただ、アキラ様の神出鬼没な能力を使って、アーサーが命の危機に陥った時には救って頂きたいのです。」


手を握り締め、ポロポロと涙を流しながら、必死に訴えてくるペネロペさん。

ど、どうしよう??

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る