命脈の杯

早速、アイテムをチェック。

きらびやかな杯には液体が入っている。

液体の正体は回復薬だ。


かなり高性能で、死んでなきゃ、だいたい回復できるという代物だ。

多少の欠損ならはえてくるし、足をバッサリ切られても、すぐに振りかければ、引っ付いてくれる。


でも、高性能な回復薬だけど、ダンジョンボスのアイテムとしては物足りない。

だってダンジョンの奥地なら普通にこんな回復薬は手に入るからね。


ポイントはわざわざ豪華な杯があるってところかな。調べたらすぐにわかりました。

この杯、名前は『命脈の杯』。

回復薬が無尽蔵に湧いてくる。

杯を空にすると、少しずつ湧いてきて、いつの間にか満杯になっている。


これがあれば回復薬の心配はしなくて済む訳だ。しかもかなり高性能だから、ぶっちゃけ水で10倍ぐらいに薄めても、かなりの高性能回復薬として扱われる。


この回復薬をどう使うかは今後考えよう。

ちなみに試飲したら、意外と美味しかった。

フルーツの味がついた天然水、あれが近いかな。水なのにほのかに甘い。

でもスイーツにそのまま使えるほどではない。




中途半端な時間だったので、そのまま階層ボスを倒したり、モンスターを倒したりして、夕方まで過ごしました。

その後、モンスターたちと合流して帰宅。



そして、夕食にて。


「回復薬が湧いてくるんだけど、少し甘くて美味しい水みたいなものだから、料理に使えないかな?」


リィズ

「試してみますね。」


ということで試作したのが、ホットココア。

お湯に少し回復薬を混ぜてある。


「あっ美味しい。」


フィオ

「甘さのかどが取れると言うか、優しくなる気がします。」


アイラ

「・・・確かに美味しいが、客には出せないな。」


「え、どうして?」


アイラ

「このココアを鑑定してみてくれ。」


アイラさんに言われるままに鑑定を実施。


『奇跡のホットココア』

HP、MP特大回復

毒、混乱、魅力、の回復

一時的に冷耐性弱を付与


僕が効果を読み上げる。


マユラ

「奇跡が過ぎるね。」


ルーシュ

「回復アイテムとして考えれば、一杯1万ウォンカ以上になるでしょうね。」


元の世界の通貨の感覚だと1杯100万円以上ってことだね。


アリエッタ

「これって、もしかして、使った料理によって効果が変わるのかな?」


フィオ

「確かに冷耐性なんかはホットメニューっぽいですよね。」


リィズ

「じゃあ、明日の朝、いくつかのメニューで試してみますね。」



翌朝

『奇跡のトースト』

HP、MP特大回復

一時的に力、丈夫さを上昇


『奇跡のコーンスープ』

HP、MP特大回復

毒、麻痺、眠り、の回復

一時的に冷耐性弱を付与


『奇跡の卵焼き』

HP、MP特大回復

毒の回復

一時的に力を上昇



凄いね。

奇跡の大安売り状態。

HP、MP特大回復は基本的についている。

そこに状態異常の回復とか一時的なステータスの上昇、耐性取得がついてくる。


どれも消費アイテムとしては破格の性能だ。

HP、MP特大回復の時点で回復薬としては市場にほとんど出回らないクラスである。

そこに追加効果があるため、まさに『奇跡』である。



とりあえず、コーラル商会のエミルさんに相談してみよう。


エミル

「絶対に止めてください。」


「ダメ?」


エミル

「こんな料理、

1万ウォンカでも安過ぎます!

どう出しても市場を破壊します。」


「じゃあ、これは?」


ただ水で薄めた回復薬。

特殊効果も無いし、回復効果も

『HP、MP中回復』

かなり性能を落としている。


エミル

「これなら市場には出せます。

これをどれぐらいの量を作れますか?」


「毎日、水瓶1杯ぐらいかな。」


エミル

「そんなに、、、」


頭を抱えるエミル。


「どうしたんですか?」


エミル

「イリーナ先輩はさすがです。

あのですね。

そんな量を市場に流せば、薬師は全員廃業です。一気に価格破壊が発生します。

月に数本程度が限界です。

それも定期的となると、、、

1、2本ぐらいでしょうね。」


「そんな少ないの!

それじゃあ減らないよ~。」

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