料理に情熱を
ヨック
「こちらです。」
モック
「チーランさん、いらっしゃいますか?」
モックさんが呼びかける。
チーラン
「今、手が放せない。
勝手に入ってくれ。」
モック
「失礼します。」
家に入ると独特な香り。
ぬか漬けとかに近いかな。
乳酸発酵させる系の香りだ。
イケメンが熱心にぬか床をかき混ぜている。
僕
「漬物ですか?」
チーラン
「そうだ。
毎日混ぜているんでね。
もうすぐ終わるから少し待っていてくれ。」
チーランさんは混ぜ終わった壺を片付けていく。
チーラン
「すまない。
待たせてしまって。
彼が連絡のあった人間かな?」
ヨック
「そうです。
アキラ様です。
アキラ様はエルフの食に興味があるそうなので、こちらにお連れしました。」
チーランさんの目が光る。
チーラン
「エルフの食に興味がおありですか。
では、実際にいくつか食べてみますか?」
僕
「いいんですか!
是非、お願いします。」
チーラン
「じゃあ、今から順番に作っていくから、少し待っていてくれ。」
僕
「わかりました。
出来れば代表的なエルフ料理みたいなのがあれば食べたいんですけど。」
チーランさんはテキパキと調理の手を止めることなく、
チーラン
「代表的なエルフ料理、と呼べるようなものはないね。
あえて言えば、この里周辺で手に入る食材を使っている料理はすべてエルフ料理ってところかな。
エルフは凝り性で、寿命も長いから、どんどん独自の料理を作る。だから人によって作る料理が全然違うんだ。」
僕
「なるほど。
外から食材は入ってこないんですか?
エルフの隠れ里は獣人との交流もあるんですよね。」
チーラン
「最低限の交流があるだけだ。
それに隠れ里で接する獣人たちの住処は近いから、手に入る食材もほとんど変わらない。
そして、その獣人たちも基本的に排他的だから、更なる外界との交流はほとんどない。」
話をしながらもチーランさんはどんどん作っていく。
完成した料理から、順番に出してくれる。
けっこう美味しい。
昨日のカレーはクセが強かったけど、チーランさんの料理はそこまでクセがない。
発酵食品を食材兼調味料として活用しているんだろうね。
野菜の旨味をよく引き出している。
残念なのは味の振り幅が狭いことかな。
味付けが似ていて、単調になってくる。
美味しいんだけどね。
チーランさんの料理を8品頂きました。
ヨック
「よく食べられますね、、、」
モック
「見ているだけでお腹がいっぱいになりそうです。」
チーラン
「よく食べたな。
私の料理はどうだった?」
僕
「1つ1つの料理は美味しいけど、連続で食べると単調で食べ飽きてくるかな。」
チーラン
「なるほどな。
言いたいことはわかった。
だが、香辛料を大量に入れて素材の味を感じられないような料理は作りたくないんだ。
素材の味を活かしていくと、どうしてもそこまで強い味付けには出来ないんだ。」
僕
「おそらくだけど、、、
使う食材の選択肢が狭いから、味が単調になるんじゃないかな。
ちょっと待ってね。」
僕はマジックバックからスープをいくつか取り出す。
かつお節と昆布の一番だしのおすまし、
しじみのお味噌汁、
ブイヤベース、
牛テールスープ、
コンソメスープ。
僕
「飲んでみて。」
チーラン
「わかった。」
すべてのスープを1口飲む。
もう1周、
もう1周。
チーラン
「うまい。
料理人の腕が良いのもだが使う食材の違い。
そして、その食材に合わせた調理法。。。
確かにこれだけ味の違いがあれば飽きることはないな。」
僕
「チーランさんの料理も美味しいよ。
仕事も丁寧だし、腕も良いと思う。
でも、同じ食材ばかりだから単調になってしまうんだと思う。」
チーラン
「目から鱗が落ちたようだ。
私は視野が狭くなっていた。
ありがとう!
私の料理に対する情熱はかつてないほど高まっているよ。」
僕
「それは良かったです。」
チーランさんの目が燃えている。
また料理の探求を頑張るんじゃないかな。
次に食べさせてもらったら、凄く美味しくなってたりして。
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