騒乱の夜

日が暮れた頃。

ヨックさんとモックさんが食事を持ってきてくれた。

ちなみに樹牢はワンルームぐらいの広さはある。簡易なベッドと机、小さな水場、それとボットン便所。確かに長期戦が出来る設備だね。


ヨック

「夕食です。

ハイエルフ様のご指示が出るまで、朝晩の食事は提供します。」


出されたのは南インドカレーに近い料理だった。大きめのお皿に色々な惣菜?カレー?みたいなのが乗っている。最初は独立して食べて、徐々に混ぜていく感じみたい。


味はけっこう個性的。

好きな人はドハマりすると思う。

僕としては、ちょっと複雑過ぎるかな。

香辛料もクセがある。


不味くはないけどね。

でも、スパイスの使い方は巧みだと思う。


僕が食べているのを2人はじっと見てくる。

正直食べにくい。


少しトークをしてみよう。

少しでも空気を和ませたい。


「ヨックさんとモックさんって獣人のハーフなんですか?」


2人に緊張感が走る。

あれ?

もしかして、ダメな話題だった?


ヨック

「私は獣人の血が入っていることを恥だとは思っていません。」


毅然と言い放つヨックさん。


「ご、ごめんなさい。

なんか、ダメな話題だったみたいで。」


モック

「あなたの言った通り、私たちはエルフと獣人のハーフです。ただハーフエルフは短命なんです。一人前になる前に死んでしまうとして、あまり好意的には受け止められません。」


血が混じることで短命になる。

厳しい話だね。


「すいません。

知らなかったとは言え、無神経でした。」


ヨック

「謝罪を受け入れます。

私はたった200年程度しか生きられないとしても、その短い年月を最大限生きたいと考えています。」


・・・思ってたのと違う。

200年生きられるんだ。

人間からしたら十分長いよ。

言わないけどさ。

価値観の違いって凄いね。

エルフの価値観からしたら200年は短過ぎるらしい。

この世界の人間だと50歳でもおじいちゃん扱いだよ。エルフはどう思っているんだろうね。



そんなことを考えている間に食べ終わりました。


「ありがとうございました。

ご馳走さまでした。」


意外とクセになる味かも。


ドォォォォォン!!


遠くで爆発音がした。

2人に緊張感が走る。


「なんですかね?」


ヨック

「わかりません。

調べてきますので、

ここで大人しく待っていてください。」


モック

「何があったかわかりませんが、ここは安全です。落ち着いてください。」


そう言い残して2人は去っていった。



・・・取り残された僕。

どうしようかな。


まだ遠くで戦闘音がしている。

戦いは続いているみたい。


僕はスプーンを出して鍵を破壊する。

樹牢の外に出て街の様子を見に行く。


う~ん

あっちこっちで戦闘が行われている。

虫タイプのモンスターが沢山街に入り込んでいる。でもエルフたちが対応している。


基本的にエルフの兵士は強い。

モンスターは多いけど、ちゃんと対応出来ている。非戦闘員も既に避難しているみたい。

エルフ全員が戦える訳じゃないんだね。



徐々にモンスターが減ってきている。

ヨックさんとモックさんも戦っている。

戦っているのを見たら違和感の正体がわかった。ヨックさんとモックさんはエルフにしては筋肉質なんだ。

マッチョって訳じゃ全然ないけど、エルフは線が細い。

やはり獣人の血なのかな。

2人は強くてしなやかな筋肉をしている。


まぁ、建物とかには被害は出ているけど、死者とかは無さそうな感じ。


ゲコ

『何か来る。』


ゲコが警戒する。

そう、ゲコが警戒するに値する力を持った存在が近くまで来ている。


エルフ

「これで終わりだな。」


エルフ

「まだ残っているかもしれない。

探索しよう。」


エルフ

「フフフフ、ハハハハ♪」


エルフ

「どうしたんだ、ユーハイム?」


ユーハイムっていったら、行方不明になってて戻って来たっていうエルフだよね。

急に笑いだしたから、周囲のエルフたちが心配そうにしている。


ユーハイム

「さあ、お越しください!

ベルゼブブ様!!」

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