忍び寄る影

翌朝。


アリエッタ

「おはよ~。」


しんどそうな顔のアリエッタさん。

二日酔いだろうね。


マユラ

「アリエッタもまだまだね。」


マユラさんは元気そう。


「ちょっと聞いて~。」


ルーシュ

「どうされたんですか?」


「昨日の夜にゲコから報告があってね。

なんかうちを調べている不審者がいたらしいんだよ。

気をつけて欲しいんだ。」


アイラ

「承知しました。

みんな、1人で出歩かないように。」


リィズ・フィオ

「「はい。」」


マユラ

「でも、どこの手の者なのかな?

最近、そういうのもなかったし。」


ルーシュ

「先日の晩餐会で知名度が上がりましたから、興味を持ったのかもしれません。」


アイラ

「どんな相手だろうとやることは変わらない。誰一人ケガしないように注意しよう。」


「当面は警戒していこう。

リンとゲコに周囲を警戒してもらうね。」


とりあえず、みんなに警戒を呼び掛けておきました。

僕も警戒しておくけど、怪しいってだけで先制攻撃も出来ないから、どうしても後手に回るんだけどね。




う~ん、

何もない。

まぁ、そんなにすぐに動くとも思わないけど。でも、警戒しながら毎日を送るのは疲れるからね。早々に解決して欲しいな。

でも待つしかないからね。

我慢、我慢。


そして夜。

獲物が網にかかった。

僕の家の敷地内に結界を張っていた。

侵入を拒む結界じゃない。

入ったら出られなくなる結界だ。

知らない間に結界に入ってしまう。

家の玄関や窓の直前まで進めるけど、そこから先には進めない。諦めて戻ろうにも、今度は僕の敷地内から出られない。

そういう結界だ。


さっそく、犯人の顔を見に行こう。


多いな。

10人ぐらいかな。

結界の範囲を狭める。

そして、明かりを灯す。


「何をしているんですか、百田先生。」


百田

「あなたを間違った道から救う為に来たの。」


・・・違和感。

何故、普通に話せるんだ。

腕には僕が着けた奴隷の腕輪がある。

僕には近付けないはず。

近付けば苦しみだすはずなんだ。

なのに、何故平然としているんだ。


捕まえた連中を見渡す。

全員、元クラスメートだ。

前に会った朝倉さんと柴田君もいる。

ディーンさんの元を去った小川さんもいる。

ん?

何故モンスターがいないんだ?


「小川さん、従魔はどうしたんですか?」


小川

「あなたには関係無いでしょ。」


話にならないな。

百田先生をこっそり魅了の状態異常にする。

他のみんなはわからなかったはず。


「小川さんの従魔はどうしたんですか?」


百田

「命令に従わなくなったから処分したわ。」


小川

「先生!」


従魔が命令に従わなくなった?

なるほどね。

小川さんの腕にも奴隷の腕輪がある。

テイマーは奴隷の腕輪を着けられるとモンスターから見放されるんだったっけ。

だから、最初、小川さんは奴隷にされずに捨てられたはず。

なら、最近奴隷にされたのか?


いや、色々考えるのは後だ。

まずは事態の終息が先だね。


「百田先生、ここにいる以外に仲間はいるの?」


百田

「平田君が宿屋で待っているわ。」


「何故、平田君だけ来なかったんですか?」


百田

「彼は戦闘向きの職業じゃないの。

それに私たちのチームの要だから、安全な場所で待機してもらっているわ。」


「つまり、最初から僕の家で戦闘をするつもりだった訳だ。」


百田

「違うわ。

最悪のケースを想定しただけよ。

戦うつもりはなかった。

ただ、寝ている間に奴隷の腕輪を着けるだけよ。」


それ一番最悪じゃん。


よく見ると全員が奴隷の腕輪を着けている。


「僕を奴隷にして従わせようとしたってことですね。」


百田

「それが最も良い方法だったの。

理解してちょうだい。」


う~ん。

なんか気持ち悪い。

百田先生は奴隷の腕輪を毛嫌いしていた。

生徒を奴隷から解放するって息巻いていた。

なのに今は生徒を奴隷にしようとしている。


どうも1人だけ現場に来なかった平田君が鍵を握っていそうだね。

まずは平田君に会おう。

続きはそれからだ。

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