晩餐会の依頼
ある日、
アーサーさんから呼び出しがあった。
王宮の私室に通された。
僕
「どうしたんですか?」
アーサー
「露骨に嫌そうな顔をするなよ!
今回は満月亭への料理の依頼だ。」
嫌そうな顔をしてたらしい。
わざわざアーサーさんが呼び出すなんて、嫌な予感しかしないよね。
僕
「何を作ればいいんですか?」
アーサー
「は~、
ようやく話を真面目に聞く気になったか。
お前に依頼したいのはアカツキ王国の第1王子ヒデタダ様を招待しての晩餐会に料理の提供して欲しいのだ。」
僕
「でも、宮廷料理人がいるでしょ?」
アーサー
「もちろんいる。
だが、今回はとても重要な晩餐会なんだ。
普通の料理ではなく、ヒデタダ様が驚くような料理を提供したいんだ。
だからアキラに依頼するんだ。
お前はアカツキ王国の食材にも精通しているんだろ。
両国の友好に寄与するような料理を出してくれ。」
僕
「でも、晩餐会なんて初めてですよ。
大丈夫なんですか?」
アーサー
「満月亭の料理なら、どこに出しても大丈夫だ。自信を持っていい。」
僕
「わかりました。
でも、そんな大事な晩餐会の料理をアーサーさんが勝手に決めちゃっていいんですか?」
アーサー
「お前な~、
私は国王陛下から今回の晩餐会のすべてを任されているんだ。
王弟たる私にしか出来ない大役だな。」
自分で大役とか言っちゃうあたりがアーサーさんの残念なところだよね。
僕
「わかりました。
参加者の人数とか、予算とか教えてください。」
アーサーさんが資料を見せてくれる。
僕
「けっこう参加者が多いですね。」
アーサー
「当然だろ。
随行する貴族などと沢山いるからな。それに事務官や護衛もいる。彼らは晩餐会には出ないが人数は多いぞ。」
僕
「そう言えば、リズムリア王国とアカツキ王国って仲良いの?」
アーサー
「現在はかなり良好な関係だ。
ベルフォームとデジーマで行われている交易は両国にとって重要な位置付けにある。
特にアカツキ王国としてはリズムリア王国はトップクラスの交易相手だからな。
それに我が国は常にドバン帝国の脅威がある。現在は西部に第2騎士団を配して対応に当たっているが、もし万が一アカツキ王国と戦争になってしまった場合、東西両方に軍を置かねばならないが、残念ながらそれほどの兵力は我が国には無い。東部が安定していることは軍事的にも大切なことなんだ。」
僕
「なるほどね。
友好関係をアピールする晩餐会でもある訳だ。」
アーサー
「その通りだ。」
僕
「あっ」
アーサー
「どうした?」
僕
「ホンダ公爵も来るんですね。」
アーサー
「ホンダ公爵を知っているのか?」
僕
「お世話になってます。」
アーサー
「それは良かった。
上手く対応してくれ。
今回のアカツキ王国からの使節団の中では、ヒデタダ王子に次ぐ重要人物だ。
なにせ、ホンダ公爵は交易の窓口であるデジーマを統治しているからな。アカツキ王国内部でもかなりの影響力を持っていると考えている。」
僕
「わかりました。」
アーサー
「それでは、アキラよ。
お前に晩餐会の料理を任せる。
なんとしても成功させてくれ。」
僕
「頑張ります。」
アーサー
「頼んだぞ。」
意外と日数がない。
それに晩餐会の参加者が多い。
これは満月亭のメンバーだけでは手が回らない。満腹亭のメンバーも総動員で当たらないとね。
王宮を出た後、満月亭、満腹亭、それぞれのメンバーに報告。
モルト
「国王陛下の参加される晩餐会を任されるなんて!
こんな光栄なことはございません!
私の料理人人生を賭けて挑みます!」
リィズ
「晩餐会ってなんですか?」
僕
「国の偉い人たちの豪華な夕食会だよ。」
フィオ
「それなら、美味しくて見栄えも豪華な料理にした方がいいですかね。」
モルトさんとリィズ・フィオの温度差が凄いことになってる。
でも、どちらも最高の料理を提供しようとする気持ちに変わりはないから問題ないかな。
まずはどんなコース料理にするか、方向性を決めないとね。
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