勇者のその後
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勇者マサキ視点です
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負けた。
惨敗だった。
ユウキを不動のエベレストに目の前で殺されたのに、俺は何も出来なかった。
俺とカナは百田先生に助けられて逃げられたが、俺が眠っている間に戦いは終わっていた。人間側の敗北だ。
百田先生は気にしなくていいと言ってくれたけど、間違いなく俺が負けたせいだ。
百田先生たちは生徒を集めて、元の世界に帰る方法を探している。
すごいな。
百田先生、柴田君、朝倉さん、小川さん、赤沢さん、三上君、平田君、大野君、杉山君。
そこに今回の戦いで、
俺、カナ(林さん)、森さん、青木さん、が追加された。
合計13人。
よく集められたと思う。
百田先生の熱意には頭が下がる。
ドバン帝国のとある街に拠点を置き、クラスメートを探している。
本当は僕も手伝いたいんだけどダメだった。
剣を握ろうとすると足が震えて気分が悪くなる。戦うことが怖くて怖くてたまらない。
奴隷にされたクラスメートを助けるには戦闘は避けて通れない。
まともに戦うことが出来なくなった不甲斐ない俺を、それでもみんな優しく接してくれている。
みんなが情報集めに動き回っているのに、俺は拠点で家事手伝いしかしていない。
ある日、有力な情報が入った。
リズムリア王国のバレティアという街で夏祭りが行われたらしい。
夜店の屋台が出るやつだ。
そんなことをするのは俺たちと同じ世界の出身者しかいない。
もちろん、クラスメートとは限らないが、調べる価値のある情報だ。
調べたら近くのパエルモにある『満腹亭』という定食屋が企画したらしい。
パエルモにいた大野君と杉山君によるとパエルモでは有名な定食屋らしい。
更に調べると満腹亭のオーナーはどうも馬場君ではないか、との結論になった。
小川さんも冒険者時代に馬場君に会っていたらしい。
百田先生
「馬場君は一度誘ったけど、断られたわ。
この世界で生きていくことを決めたから、クラスメートには関わりたくないそうよ。」
柴田
「俺も会ったけど、好き勝手なこと言って協力を断られたぜ。」
馬場君か。
あまり話をしたことはない。
いつも下を向いて、自信無さげにキョロキョロしていた。
そんな彼が異世界で定食屋を成功させているらしい。
それは凄いことだと思う。
馬場君のことは放置し、他のクラスメートを調べることになった。
他にも情報があり、アカツキ王国に渡ったのではないか、との情報だ。
アカツキ王国は海を渡らないといけない。
しかし、建国に異世界人が関わっているらしく、元の世界に似た物が沢山あるらしい。
もう少し情報を集めてから、捜索隊を編成することになった。
俺は肩身の狭い思いをしながらも、拠点で暮らしている。みんなが情報集めに頑張っているのに、何も出来ない自分が歯がゆい。
でも、ここで何日も暮らしている中で、違和感を感じるようになった。
何かがおかしい。
その違和感の正体がわからない。
ある日、
カナの腕を見ると奴隷の腕輪があった。
マサキ
「カナ!
その奴隷の腕輪はどうしたんだ!」
カナ
「ああ、これね。
護身具よ。
奴隷の腕輪を着けておけば、それを外さない限り、他の奴隷の腕輪を着けられないの。
奴隷の腕輪をしている方が奴隷にされないって変な感じだけどね。」
マサキ
「そうか、、、
良かった。」
カナ
「心配してくれてありがとう。」
理屈はわかるけど、気持ちが追いつかない。
奴隷の腕輪には嫌な思い出しかないからね。
よくよく見ると、俺以外全員が奴隷の腕輪をはめていた。
奴隷にされたクラスメートを助けるには必要な防護措置なんだろうな。
何も出来ない俺が口を挟むことなんて出来ないよ。
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