代官ハリー

翌週。

再びボルトの街へ。


チェリオ・ロン

「宜しくお願いします。」


大きな荷物を背負った2人。

ロンさんは問題なければ、そのまま移り住む予定だ。だからロンさんの荷物を持てるだけ持ってきたみたい。


「じゃあ行きますね。」


まずはリターンポイントでパエルモに移動。

そこからは飛行魔法で飛んでいく。


チェリオ

「なんなんだ!?」


ロン

「えっ!?ええっ!!」


瞬間移動したり、飛行したりするのが珍しかったみたい。

まぁ、当たり前か。

ひとしきり叫んで、落ち着いた後。


「僕の秘密の移動手段なんで、内密にしといてくださいね。」


パエルモからチリーナまではそれほど遠くはない。もちろん、馬車だと何日もかかるけどね。


チェリオ

「夢を見ているようだ。」


ロン

「世界って広いんだな、、、

こんなこと想像したこともなかった。」


「普通の冒険者は空も飛ばないし、瞬間移動もしないからね。」


そんな話をしながら、領主の館へ。

領主の館と言っても、パエルモ伯爵の屋敷と比較すると全然大きさは違う。

周囲の農家よりも大きいって程度だ。


ハリー

「アキラ様、

よくお越しくださいました。

そちらのお2人は?」


「ボルトでワイン作りをしているチェリオさんとロンさん親子だよ。

ロンさんはここに住んでくれるかも、って感じ。」


ハリー

「おぉ!

さすがアキラ様。

ワイン作りで有名なボルトから早速スカウトしてこられるとは!」


チェリオ

「こちらの兄さんは?」


「このチリーナの代官をやってるハリーさんだよ。」


ロン

「代官様!?」


チェリオ

「代官様から『様』付けで呼ばれるなんて、あんた何者だよ?」


「僕はただの商人だよ。

ハリーさんの上司にあたるパエルモ伯爵と懇意にしているから、ハリーさんが気を使ってくれているだけだよ。」


ロン

「貴族様と懇意ってアキラさんって凄い商人だったんだな。」


ハリー

「せっかくなので、ブドウ畑とワインの製造設備を見に行きましょうか。」


ハリーさんが馬車を用意してくれました。

馬車の中でカチコチに緊張しているチェリオさんとロンさん。


「ハリーさん、

代官って偉いの?」


ハリー

「ハハハハ、それほどではありませんよ。

ただ、一般の農家さんからすると距離のある存在かもしれませんね。

小さな領地を治める領主は直接統治しますが、ある程度の規模になると代官を何名か配置します。その代官がいくつかの街や村を統治します。そしてそれぞれの村の名士が村長となり、村を治めます。

一般の農家さんからすれば上司の上司といった感じでしょうかね。」


ハリーさんの説明はわかりやすいね。


「じゃあ、やっぱりハリーさん偉いんじゃん。」


ハリー

「アキラ様、

念のため申し上げますが、私よりも断然アキラ様の方が格上ですよ。」


「えっ、そうなの?」


ハリー

「はい。」


チェリオさんとロンさんもどうしようって顔になってる。


「まぁ、なんでもいいですよ。

僕はただの定食屋の店主です。」


ハリー

「それでよろしいかと思います。

チェリオさんやロンさんも緊張なさらずに。

あなた方は技術指導に来てくれた客人です。私たちは敬意を持って対応致しますよ。」


ハリーさんって出来る人だね。

気が使えるし、優しいし。




ようやく目的地に到着。

まずはブドウ畑をチェック。


チェリオ

「土は悪く無さそうだな。

ブドウの木の状態も悪くない。

果実は見てみないとなんとも言えないが。

ただ、この広さだと作れる量が少ないな。

商売として成立させるなら、もう少し広げたいところだな。」


「どうやって広げるんですか?」


チェリオ

「一般的には挿し木だな。

乱暴に言えば、枝を切って、地面にぶっ刺して、新しく根付かせるんだ。

ただ挿し木をしてから、実が出来るように育つのに数年はかかる。

気長に待つしかないな。」


数年は長いな~。

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