土地はいかが?

パエルモ伯爵の王都のお屋敷に呼ばれました。パエルモ伯爵はまだまだ忙しくて自領に戻れないみたい。


パエルモ

「よく来てくれた。」


「忙しそうですね。」


パエルモ

「体が3つ欲しいぐらいだ。

今回の一件で事務官が足りなくなっている。

ブルータス派だった事務官が粛清されたからな。」


「後で疲労回復効果のある飲み物をお渡ししますよ。」


パエルモ

「あぁ、助かる。」


表情がお疲れって感じだからね。

少しぐらいはサービスもするよ。


パエルモ

「今日来てもらったのは、お前に渡したい物があってな。」


「なんですか?」


パエルモ

「土地だよ。

以前渡した土地は人も増えて、有効活用出来ているようじゃないか。

もう1つどうだ?」


「そんな簡単にホイホイ土地を渡していいんですか?」


パエルモ

「普通は渡さんよ。

だが、お前には実績もある。

代官はこちらで用意するが、街は好きにしていい。お前が喜びそうな街だ。」


「どういうことですか?」


パエルモ

「前の領主がワイン作りを目指していたらしい。商売にはまだなっていないがブドウの栽培は行っている。

どうだ。

街でブドウ畑を広げてワイン作りを進めてみてはどうだ?」


僕はジト目でパエルモ伯爵を見る。


「話がうま過ぎますよ。

裏がありますよね?」


パエルモ

「裏と言うほどではないがな。

これを見ろ。」


パエルモ伯爵が地図を出した。

パエルモ伯爵が指し示した場所は王都の南部。


パエルモ

「新しく領地として私に与えられたのがここだ。そして、お前に与える街はここだ。

チリーナという街だ。」


「南部と王都の中間ってことですか。」


パエルモ

「その通りだ。

万が一、南部が武装蜂起して王都に迫る場合、必ず通る場所だ。そこを私に与えて南部への抑えとしたいんだろう。

私としてはお前にそこを与えることで万が一の備えとしたい訳だ。

もちろんワインの生産を成功させて、産業振興を行いたいのもある。新しい産業を振興させるのは難しいことだからな。」


エドワルド国王も直球だね。

南部にドンとパエルモ伯爵の領地を持たせて、王都の守りとしながら、南部からの反感をパエルモ伯爵に集めようとしているってことらしい。


「理由はわかりましたけど、本当に好きにしていいんですか?」


パエルモ

「もちろん限度はあるがな。

ワイン作りのためであればだいたいのことはかまわん。私が用意した代官に相談しながら進めてくれ。」


「わかりました。やってみます。」


パエルモ

「助かる。

ちょっと待ってくれよ。」


パエルモ伯爵が若い男性を連れてきた。

パッと見た感じ、僕と年齢変わらないかも。


パエルモ

「ハリーだ。

代官をするのは初めてだが、優秀な男だ。」


ハリー

「ハリーと申します。

アキラ様のサポートを致しますので、なんなりとお申し付けください。

私は明日、チリーナに向けて出発致します。到着は10日後ぐらいでしょうか。

向こうに到着したら、以前の領主が住んでいた屋敷を利用する予定です。

いつでも訪ねて来てください。」


「よろしくお願いします。

じゃあ、ワイン作りの準備しときます。

ちょっと先に街を見に行ってもいいかな?」


ハリー

「かまいませんよ。

アキラ様の身元を保証する書状を用意しますね。それを見せれば私が到着する前でも現地で自由に動けますよ。」


「ありがとうございます。」




翌日。

早速チリーナへ。


うん。

辺鄙な街だね。

パエルモとは比べものにならない小ささ。

一応、ギリ街って感じかな。

農村よりは人が多いけど、栄えているとは言えないね。


街の周囲は畑が広がる。

確かにブドウ畑もあるけど、少し物足りないかな。本気でワイン作りをするならもう少し広さが必要だと思う。

ボルトのブドウ畑と比べると貧相だね。


ワインの工場も、工場と呼ぶには設備が整っていない。設備投資は必要だろうね。

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