SOS

ある日。

満腹亭で営業開始の準備をしていると、小鳥が飛んできた。


「ん?」


足には手紙が結んであった。


これが鳥便だね。

短い手紙のやり取りに使ったりするんだ。

急ぎの連絡なんかによく使われている。


ただ、僕宛に届くのは始めてだ。

なんだろう?

手紙を開けて読むと。


『助けてくれ アーサー』


うわ~

不穏な文面。

厄介事のにおいしかしないよ。

どうしよう?


僕が悩んでいると、


アイラ

「どうした?」


「実は、、、」


僕は届いた手紙をアイラさんに見せた。


アイラ

「緊急事態だろうな。

すぐにパエルモ伯爵に相談した方がいいだろう。」


「見なかったことにしたらダメ?」


アイラ

「よけいに事態が悪化するだけだ。

早めに対応しておきなさい。」


「は~

わかったよ。

たぶん厄介な事件だろうから、少し家を空けるね。留守の間、よろしくね。」


アイラ

「お店のことは任せて、安心して行ってきなさい。」


仕方ないのでパエルモ伯爵のお屋敷に急ぐ。

火急の用件ということで伯爵を急いで呼んでもらう。


すぐにパエルモ伯爵が慌ててやって来た。


パエルモ

「どうした?

何があったんだ?」


「これが僕のところに届きまして。」


パエルモ

「これは!?」


「どう思います?」


パエルモ

「最悪の事態かもしれん。。。

アキラよ、従魔たちを連れて、一緒に王都に行ってくれんか?」


「何が起きてるんですか?」


パエルモ

「あくまでも想像だが、、、

国王陛下が崩御されたんだろう。

そして、第2王子であるブルータス王子が王宮を占拠した可能性が高い。」


「それって、どれぐらいヤバいんですか?」


パエルモ

「王宮を抑えたブルータス王子と今遠征に出ているエドワルド王子とで、国を二分する戦争が起こる可能性が高い。」


「なんでそんなことを?」


パエルモ

「間が悪かった。

今、第1王子であるエドワルド王子は兵を連れて王宮を遠く離れている。

それに外敵であるドバン帝国が攻めてくる心配は無い。

そんなタイミングで国王陛下が亡くなられた。天の導きとでも考えたのだろうな。」


「どうされるおつもりですか?」


パエルモ

「王位争いで国を二分するなど愚の骨頂。

エドワルド王子が王位を継承出来るようにサポートする。アキラにも手を貸してもらいたい。」


「え~」


あからさまに嫌そうな顔をする。


パエルモ

「お前の不満はわかる。

政治的なことに関わりたくないのは知っているからな。

だが国を二分して、不毛な争いをするような未来は避けたい。

そのためにはお前の力が必要なんだ。

頼む。

この通りだ。」


パエルモ伯爵が深々と頭を下げる。


ズルいよ。

そんなことされたら断れないよ。


「わかりました。

すぐに出発ですか。」


パエルモ

「そうだな。

すぐに準備を整える。

1時間後に従魔とともに来てくれないか。」


「わかりました。

従魔全員は無理ですよ。

お店の守りもいるし。」


パエルモ

「もちろんだ。

無理を言っているのは承知している。

可能な範囲でかまわん。」




僕はお店のみんなに事情を説明して、留守番をお願いした。万が一に備えて、ボゥにお店を守ってもらうように伝えた。


マユラ

「無理しちゃダメよ。

嫌なことは嫌って言ったらいいからね。」


アイラ

「満腹亭のことは心配いらない。

誰一人傷付けさせやしないさ。」


「ありがとう。

アイラさんもケガするようなことしないでね。」


ルーシュ

「アイラさんが無理しないように私が見張っておきます。」


アリエッタ

「満月亭のメンバーの様子も見る余裕があったらお願いね。」


「大丈夫。

あっちに着いたらガウを満月亭に行かせるから。」


リィズ

「2人で用意しました。」


フィオ

「カツサンドです。

持って行ってください。」


「ありがとう!

後でいただくね。」



1時間後。

パエルモ伯爵、ヒースさん、フレデリカさん、それに僕たち。

夕方には到着出来るはずだ。

みんなで飛び立った。

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