幽霊船

漁師さんたちと別れ、僕は1人ふわふわ浮かんでいると、霧の中から、うっすら船影が見えてきた。


近寄って見ると、

ボロボロの海賊船だった。

大きな帆船だ。

かなり大きい。

帆はボロボロになっている。

船体も傷が目立つ。

船首も折れている。

しっかりドクロマークの旗がある。

わかりやすい海賊船だね。


甲板に降り立つ。

いや~、アンデッドだらけだね。

スケルトンとゾンビとゴースト。

ゾンビが一番グロテスクだよね。

しかも臭い。


近寄って来る前に浄化していく。

アンデッド系以外にも水棲タイプのモンスターも徘徊している。


ボロボロの海賊船の内部に入っていく。

モンスターは多いけど、弱い。

特に問題もなく倒していく。

でも広いね。しかも船内は暗い。

光を照らしながら、慎重に進んで行く。


じめじめして、薄暗くて不快指数は高い。

まぁ、快適な幽霊船なんてないよね。


広い船内をゆっくり散策して歩く。

特に障害になるようなモンスターはいない。


ついに船長室だ。

ロールプレイングゲームならボスがいる場所だけど、何が出てくるかな?


船長室を開けると、


「ほう、久しぶりだね。

ここまでたどり着く人間は。」


声がした方向には船長感が満載のスケルトンがいた。


「この船の船長?」


骨船長

「そうだ。

いや、そうだった、と言うべきかな。

もはやこの船をコントロール出来ないからね。私も他のアンデッドたちと同じ。

ただ船に乗っているだけだ。

船員もいない、船も操作出来ないじゃあ、船長とは名乗れないだろ。」


骨だけど、寂しそうな雰囲気を出している。

骨だけど。


「この船はなんで幽霊船になったんですか?」


骨船長

「残念ながら、理由はわからないね。

モンスターに襲われ、難破して、いつの間にか幽霊船になっていたよ。」


「幽霊船から降りないんですか?」


骨船長

「う~ん。

降りられるなら降りたいけど、無理なんだよ。

大海原で船を降りる訳にはいかないし、近くの船に乗りたいって思っても、幽霊船が近付けば普通の船は逃げ出すからね。」


「確かにね~。」


骨船長

「1つお願いがあるんだが。。。

聞いてくれるかな?」


「中身によりますけど。」


骨船長

「私を倒して欲しいんだ。

もうスケルトンとしての生活は十分だよ。」


「いいの?

船から降ろしてあげることもできるけど。」


骨船長

「でもね~、、、

港に着いた時点で倒されちゃうよ。

逃げ隠れする生活も辛いしね~。

スケルトンが安全に過ごせる場所なんてどこにもないんだよ。」


「うーん。

良かったら、僕の街に住んでみる?

全員、僕の奴隷だから、僕が倒しちゃダメって言えば、手を出さないと思うけど。」


骨船長

「いいんですか?

スケルトンですよ?」


「テイマーもしてるんで、モンスターには抵抗ないですよ。」


骨船長

「じゃあ、お言葉に甘えようかな。」


「いいよ。

一緒においでよ。」


骨船長

「じゃあ、一緒に行く前にこの船を沈めようかな。」


「えっ?」


骨船長

「幽霊船なんて迷惑なだけだからね。

船底に穴を開ければ沈むだろ。」


「じゃあ、沈めるよ。」


僕が魔法を放とうとすると、


骨船長

「ちょ、ちょっと待って!

持って行きたい物があるんだ。」


「お宝とか?」


骨船長

「ハッハッハッ

宝は既に持って行かれたよ。

金目の物は何も残ってないな。

だけど・・・

宝の地図はあるんだな~。」


「宝の地図!」


骨船長

「私たちは宝を探して航海している最中に死んでしまったんだ。私にとっては宝よりも価値のある物なんだよ。」


「いいな~。

ロマンだよね。

宝探ししてみたいな。」


骨船長

「宝の地図、あげようか?」


「いいの?」


骨船長

「さすがにスケルトンで宝探しは無理だからね。私のことを心配してくれたお礼だよ。」


「一緒に探しに行こうよ。」


なんか、この骨船長に感情移入しているみたい。

骨船長は何年幽霊船にいたんだろう?

周りは自我を失って完全なモンスターになってしまって、自分だけ自我を保ったのは悲劇だよね。

孤独だったろうね。

周りには元船員がいるんだろうけど、完全なモンスターになってしまっている。


本当の孤独は、

誰もいないことじゃなくて、

周りに人がいるのにコミュニケーションが出来ないことだと思う。

教室の中の僕みたいだったからかな。

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