初来店

ようやく満月亭がオープンを迎えました。

初日のお客様はアーサー王子一行だけ。

僕もオーナーとしてお出迎えです。

モーニングを着ているけど、似合わないね。


パエルモ伯爵にも声をかけたけど、さすがに王族と同じ扱いはダメだ、と言われてしまいました。パエルモ伯爵からは初日に王子をお迎えするなら他の客は取らないように釘を刺されました。


さすが王族。

豪華な馬車でやって来ました。

アーサー王子ときれいな女性が一緒だ。

目鼻立ちのハッキリとした美人。

ペネロペさんという婚約者らしい。

羨ましいね。

どこかの伯爵家のご令嬢らしい。


「アーサー殿下、ペネロペ様、

ようこそお越しくださいました。」


ザバスさんに教えてもらったお辞儀をする。


アーサー

「楽にせよ。

今日は楽しみにしているぞ。」


僕は頭を上げて、


「有り難き御言葉。

ご期待に沿えますよう、最高の料理をご用意致しております。」


アーサー王子を連れて個室にご案内。

エマさん、エリオさん、セリスさんも一列に並んで礼をする。


アーサー王子の護衛や付き人は待機室へ。

アーサー王子とペネロペさんを客室に案内する。


「この客室は外からは中が見えませんし、扉を締めれば音も漏れません。安心してください。」


付き人とかと離れたので、ようやく気が抜ける。


アーサー

「おいおい、なんで付き人や護衛の方に気を使って、私にはラフなんだ?」


「アーサー王子の前では既にやらかしてるのでもういいかな~と思って。」


アーサー

「いい訳があるか。

私には最大限の敬意を持って接しよ。」


「もちろんです。

さっ、お座りください。」


エマさんとセリスさんが椅子を引く。


アーサー

「コラッ、

私の話を流すな。」


などと言いつつも素直に座るアーサー王子。


ペネロペ

「フフフ、殿下のそのようなお姿は初めて拝見致しました。

仲がよろしいのですね。」


アーサー

「仲が良い訳あるか。」



そこからコース料理をスタート。

食前酒からスタートして、デザートまで。


2人とも超上流階級だね。

食べる姿が上品で黙っていれば、絵画のようだった。



アーサー

「とても美味しかったぞ。

特にあのシチュー。

初めての味だった。」


ペネロペ

「あのデザートもアメイジングだったわ。

ただ珍しい果物を用意するだけじゃなくて、遊び心があって、楽しい演出でしたわ。」


「あのシチューはシェフの渾身の一皿です。

この満月亭の名物料理にしたいと申していました。

それとデザートは僕のアイデアなんです。

喜んでもらえて嬉しいです。」


アーサー

「あのデザートか。

確かにあんな調理は初めて見た。

アキラは料理でも常識を破壊するようだな。」


ペネロペ

「ユニークなお料理たちに魅了されました。

本当に美味しかったわ。

アーサー様、

是非また連れて来てくださいね。」


アーサー

「うむ。

また来よう。」


アキラ

「今日は初日の特別招待でしたけど、明日以降は予約をお願いしますね。

既に予約頂いているお客様をキャンセルすることは出来ませんので。」


アーサー

「わかった。

後で使者を出す。

次は秋頃かな。

スケジュールを調整しておいてくれ。」


「承知致しました。」



アーサー王子もペネロペさんも満足してくれたみたい。

ちゃんと次回の予約までしてくれました。


次は秋頃に来てくれるらしい。

秋が旬の食材で次の来訪をお出迎えしないとね。

またモルトさんと打合せしないと。

やっぱり来る度に驚きと感動がないとね。



ちなみに。

アーサー王子の翌日にはパエルモ伯爵一家をご招待です。

僕の飛行魔法に子どもたちは大興奮でした。

さすがにわざわざご飯を食べるためだけに一家で延々と馬車移動してもらうのは申し訳ないからね。


もちろん、

みんな満月亭には大満足してくれました。

また来たいって言ってくれました。

と言うか、伯爵は予約してました。

パエルモ伯爵は王都に来る機会も多いからね。

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