反攻作戦
結局、パエルモ伯爵の新規事業に共同出資することになりました。
契約はガロッソさんが代わりに交渉してくれました。
出資額は1500万ウォンカ。
僕も溜め込んでるね。
それだけ出してもまだ資産があるってことに自分でもびっくりです。
ちなみにガロッソさんもしたたか。
新規事業そのものはパエルモ伯爵と僕の共同出資だけど、工事関係の契約をいくつか結んでいた。
さすが商人。
ちゃんと仕事を作っていくね。
商談を終えた後。
パエルモ
「まったくの別件で話がある。
これは何かをしてくれという話ではない。
頭の片隅に置いておいてくれば良い。」
なんの話だろう?
パエルモ
「大陸の西側で魔族に対する一大反攻作戦を行うことになったようだ。」
僕
「そうなんですか。
でも魔族って強いでしょ?」
パエルモ
「先日、勇者が魔族の幹部、狂嵐のボウザーを倒したのは知っているだろ。」
僕
「もちろんです。」
僕もちょうどボルトの街でブドウ畑を守る戦いをしてたからね。
魔族とも戦っている。
戦ったメインはガウたちだけどね。
ガウとほどほどに戦っていたから、魔族はかなり強いって印象がある。
パエルモ
「ドバン帝国はこれを好機と見て、魔族の幹部、不動のエベレストの攻略にのり出すようだ。」
山っぽい名前の魔族だね。
パエルモ
「不動のエベレストは大陸西部の港町ノルマンを支配する魔族の幹部だ。
そもそも魔族は魔大陸から海を渡って、ノルマンに上陸し、セントラル大陸で暴れている。その要衝を支配しているのが不動のエベレストだ。
ノルマンを奪還し、魔族の上陸を阻止出来るようになれば戦況は大きく動く。成功すれば時代の転換点となる作戦だ。
世界の今後を左右する作戦の準備が進められていることは、知っておいて損はないだろう。」
僕
「その魔族は強いんですか?」
パエルモ
「強い。
過去にも人間は何度もノルマンを攻めているが、一度も勝利したことはない。
それだけに勇者の活躍に期待するしかないな。」
僕
「パエルモにとっては勝った方がいいんですか?負けた方がいいんですか?」
パエルモ
「難しい質問だな。
負ければ人間の存亡に関わることになるかもしれん。
しかし、勝てば魔族の脅威は大幅に低減し、ドバン帝国が侵略に力を入れるかもしれん。
安易にどちらが良いとも言えんな。」
僕
「なるほど。」
どっちに転ぶかわからないってことかな。
でもパエルモは大陸の東側。
すぐに大きな影響が出るってことはないんじゃないかな。
僕は手を出すつもりはない。
だって興味ないし。
わざわざ大陸の反対側まで行って、勝っても得する保証のない戦争に参加するほど、戦闘好きじゃない。
・・・ボルトの街ぐらいは見に行こうかな。
あの街のワインは王都の店で使う予定だからね。街が滅んでしまうと困っちゃうよ。
僕
「特に手を出すつもりはないですね。
僕の生活に影響ないですし。」
パエルモ
「それでかまわん。
だが、世界が大きく動こうとしている。
いつまでも無関係を貫くことは難しいだろう。何をすべきか、何と戦い、何を守るのか、そういう選択をする時が来る。
それは覚悟しておきなさい。」
パエルモ伯爵はいつになく真面目な表情をしている。
僕
「ありがとうございます。
優先順位は間違えないつもりです。
守りたい人は守りますよ。
もちろん、パエルモ伯爵もガロッソさんも守りたいと思ってます。」
パエルモ
「そう言ってもらえるのは有難いな。
だが、私も領主なのでね。
守る側に立たねばならん。
定食屋に守ってもらうことを期待している場合ではないのでな。」
パエルモ
「アキラ、お前はあちらこちら飛び回っているだろう。
手に入れた情報は共有してほしい。
情報は重要だ。」
僕
「わかりました。」
パエルモ伯爵はさすがに人の扱いがうまいね。色々話をしたけど、要は世界の情勢が不安定だから、手に入れた情報を共有してくれ、ってことみたい。
まぁ、パエルモの街の安全を守ってもらわないとダメだもんね。
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