産業振興
パエルモ
「ところで、アキラよ。
まったく別件で相談があるのだが。」
僕
「なんですか?」
パエルモ
「お前、えげつない額の資産を溜め込んでいるだろう?」
僕
「最近、細かく見てないですけど、たぶんかなり貯まっていると思います。
それがどうしたんですか?」
パエルモ
「うむ。
使わない資産が一ヶ所に溜まり続けるのは経済的にはあまりよろしくないと私は考えているんだ。」
僕
「つまり、もっとお金を使え、と?」
パエルモ
「単純に言えば、そういうことだが。。。
無駄遣いをするのは嫌だろ。
そこで提案がある。」
僕
「なんですか?」
パエルモ
「巨大農場とジャム工場の建設に出資せんか?」
僕
「えっと、、、
もう少し説明をお願いします。」
パエルモ
「大丈夫だ。
今から説明する。
街の周辺で新規の開墾を推奨し、新しい農村を作るようにしているのは知っているだろう?」
僕
「はい、知ってます。」
土地を親から継げない次男以降を労働力として新規の農地を広げるように振興しているのは知っている。
確か、新しく畑を作ったら、3年ぐらいは税金無しとか、そういう感じだったと思う。
パエルモ
「今までは小麦を中心に広げてきたが、それだけだと他の領と差別化が出来ん。
そこで目をつけたのがオレンジだ。
街の南西部にオレンジの樹が群生している場所がある。
昔、栽培していたがモンスターにやられて農村が廃れ、今は放置状態になっている。そこを整備して、更にジャムの工場を併設する。
ジャムにすれば日持ちするからな。
この街の新たな交易品に出来るかもしれん。
その事業に出資してくれんか?」
面白そうだね。
ジャム工場か~。
うちの実験農場の果物をジャムにするのもありかも。
僕
「面白そうですね。
興味はあります。
でも出資して元は取れるんですか?」
パエルモ
「20年や30年といった長いスパンで考えれば利益は出ると思う。
ただ、数年は特になんの利益もないだろうな。」
パエルモ伯爵って、けっこう正直なんだよな~、数年は損しかない事業か。
僕
「一度相談してきます。
それで決めます。」
パエルモ
「まぁ大金が動く話だ。
即決は難しいだろう。
簡単な事業説明をザバスに用意させよう。
それをよく読んでくれ。
ただし、まだ非公開の事業だ。あまり話を広めないでくれよ。」
僕
「コーラル商会のガロッソさんとかに相談しても大丈夫ですか?」
パエルモ
「コーラル商会ならかまわん。
お前の保護者のようなものだからな。
折り込み済みだ。」
僕はパエルモ伯爵のお屋敷を出て、そのままコーラル商会に向かう。
さっそく、ガロッソさんに説明した。
ガロッソ
「なるほどな。
俺は出資しても損はないと思うぞ。
契約に立ち会ってもかまわんし。」
僕
「そうなんだ。
意外とあっさりOKでしたね。
もう少し慎重に考えろ、って言われるかと思ってました。」
ガロッソ
「理由はいくつかあるが、
アキラの溜まり過ぎた金を使うのは必要なことだ。
それに伯爵の事業に共同出資者になるというのもメリットとして大きい。商人として箔がつく。それに事業が軌道に乗れば、定期的な利益が見込める。それこそ、アキラの子どもや孫の代まで安定収入が得られる可能性がある。事業が失敗すれば損にはなるが、その可能性も低いだろう。」
なるほどね。
僕
「じゃあ出資します。
細かい契約内容を決める時は手伝ってください。」
ガロッソ
「わかった。
パエルモ伯爵に使者を出して、予定を確認しておけ。」
僕
「え?」
ガロッソ
「ん?
どうした?」
僕
「予定を確認する使者ってなんですか?」
ガロッソ
「なっ!?
今までどうしてたんだ?」
僕
「呼び出されるか、勝手に訪問するか、のどっちかです。」
ガロッソ
「お前な~。
貴族様のお屋敷を訪れるなら事前に使者を立て、都合を確認するのが常識だ。
俺もうっかりしていたな。
今度イリーナに指導してもらえ。
最低限の常識は必要だぞ。」
僕
「はい。
勉強します。」
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