ディーンの事情
ディーン
「ふ~、
美味しかったよ。
ありがとう。
こんなに満腹になったのは久しぶりだよ。
それで、何が聞きたかったんだい?」
僕
「実はパエルモ伯爵の騎士団に入ってくれそうな強い人を探しているんだ。」
ディーン
「もう少し状況を説明してくれないか?
パエルモ伯爵の騎士団なら応募者はいくらでもいるんじゃないか?」
僕
「うーん、
少数の襲撃者に騎士団がボロボロにやられたみたいなんだ。
だから、すっごく強い人を雇いたいらしいんだよね。」
ディーン
「なるほどね。
強さで言えば、断トツで『戦姫フレデリカ』だね。」
僕
「戦姫フレデリカ?
知り合いなんですか?」
ディーン
「いやいや、ここでは超がつくぐらいの有名人だよ。常に単独でダンジョンに潜る最強の戦闘狂。ヒルギスの冒険者で知らない人はいないよ。」
マユラ
「いいじゃん。その人勧誘しちゃお!」
ディーン
「数々の勧誘を全て断っているらしいよ。
噂では、各国が破格の条件を提示してもダメだったらしい。」
僕
「そうか~、無理なんだ。」
マユラ
「諦めるの早過ぎだって。
私に任せてみない?
口説き落としてみせるよ。」
おっ!
マユラさんが頼もしい。
僕に断る理由はない。
僕
「お願いします。」
マユラ
「作戦があるんだな~。
アキラ君も手伝ってよ。」
僕
「もちろん。」
ディーン
「アキラ君、出来れば声をかけてあげて欲しい冒険者がいるんだ。」
僕
「どういう人?」
ディーン
「トンプソンという冒険者なんだけど、リザーブナイツというパーティーのリーダーをしているんだけど、騎士になることを目標に頑張っているパーティーなんだ。
とても頑張っていてね、出来ればパエルモ伯爵に紹介してくれないかな。
チャンスをあげて欲しいんだ。」
ディーンさん、優しいね。
僕
「それぐらいなら大丈夫ですよ。」
マユラ
「ディーン君さ~、
他の冒険者の心配より、自分のこと心配した方がいいんじゃない。
うまくいってないんでしょ?」
マユラさん、直球過ぎ。
ディーン
「ふふ、
その通りだよ。
パーティーを解散することになってね。
今はお金も無くて、冒険者も続けられない状態なんだ。」
僕
「えっ!?
ダンジョンでCランクを目指すって言ってたじゃないですか。
何があったんですか?」
ディーン
「エリカを覚えているかい?」
僕の元クラスメートのハイテイマーだ。
ディーンさんとパーティーを組んでいたはず。
僕
「もちろん、覚えているよ。」
ディーン
「彼女の従魔を強くするためにパーティーで頑張ってたんだけどね。
彼女は突然、パーティーの全財産や装備品を持って去ってしまったんだ。
そこからパーティー内でもめてね。
結局、みんな去って行って、私だけがヒルギスに残ることになったんだ。今は装備品を揃える為にした借金でギリギリの生活だよ。」
僕
「なんで小川さんはいなくなってしまったんですか?」
ディーン
「さぁ?
私にもさっぱりわからないよ。
失踪する前に不審な連中と接触していたみたいなんだ。
・・・もうどうしようもないけどね。」
僕
「ディーンさんもパエルモ伯爵に仕官しませんか?今のままじゃジリ貧でしょ。」
ディーン
「・・・しかし、私はまだまだ力不足だ。
試験を受けに行く路銀もないし、落ちれば完全に破産だ。」
ディーンさんがネガティブになってる。
以前のポジティブでキラキラしていた雰囲気がない。
僕
「僕がレベル上げを手伝います。
移動もサポートしましょう。
ディーンさんが強くなれば、パエルモ伯爵の依頼に応えたことになるし。」
ディーン
「・・・ありが、とう、、、」
ディーンさんがポロポロと泣き出した。
どうしよう??
ディーン
「こんな落ちぶれた私にまだ優しくしてくれるなんて、、、
わかった。
やってみるよ!」
涙を拭いて、ディーンさんが顔を上げる。
目には以前の輝きがあった。
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