スライムの壺

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今回は別人の話です。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


それからもスライムとの戦いは続いた。

そして5日目。


街道からかなり遠い場所。

スライムだらけの谷に到達した。


テオ

「凄い数だ。

ここが発生源だろうな。

こちらも密集して対応する。

無理に前に出るなよ。

囲まれて戻れなくなるぞ。」


魔法使いたちを中心に攻撃していくがスライムが減っている実感はない。

それでも無駄ではないと信じ攻撃を続ける。


しばらくして、異変が起きた。


テオ

「下がれ!

下がるんだ!

スライムの波に取り込まれるぞ!」


スライムたちが大波のようになりながら迫ってくる。

思ったよりも速い。

気付くのが遅れていたら巻き込まれていた。

騎士団も健在のようだ。


ようやく波がおさまったと思った、その時。

再びスライムが大きく膨れ上がる。


テオ

「こ、これは!?」


ニック

「このデカイのもスライムなのか?」


ギャン

「信じられん。」


ドッゴ

「コアは?

コアはどこにあるんだ?」


大きな大きなスライム。

まるで山のようだ。

天辺が見えない。


テオ

「見ろ!

上の方に何かあるぞ!」


普通のスライムのコアとは違う。

半透明のスライムの体の中に大きな壺が見えた。高さが1メートルぐらいはありそうな壺だ。それ以外にコアらしき物は見えない。


ヒース

「あれが原因か。

確か古代の遺物の中には、モンスターを生み出す物もあると聞いたことがある。

あの壺が特大スライムを生み出しているのかもしれん。」


テオ

「あの壺目掛けて魔法を集中させろ!」


魔法が殺到するが分厚いスライムの壁を突破出来ない。

当然、武器による攻撃も高過ぎて届かない。


打つ手なし。

その間にも特大スライムは体をうねらせ、冒険者や騎士たちを襲ってくる。

スライムに飲み込まれれば死ぬ。

それは間違いない。


テオ

「ヘーデン王国軍が負けた理由はこいつか!」


大野

「流星槍」


片腕の男が槍を投げるスキルを使った。

猛烈な勢いで壺に迫るも、届かず。


大野

「ダメだ、攻撃力が足りない。

もっと強い槍はないのかよ!」


ヒース

「他の槍も大して変わらん。

いや、少し待て!」


スライムの壺から小石のような物がこぼれ落ちる。それはスライムの体内を通り、地面に落ちる。

新しいスライムが誕生していた。


テオ

「あの壺、スライムのコアを作っているのか。数が多い理由もこいつか!」


ヒースがテオに話かける。


ヒース

「槍を貸してくれ。

後で礼はする。」


迷っている暇はない。


テオ

「借り物なんです。

ちゃんと返してくださいね。」


ヒース

「善処する。」


テオ

「ドッゴ!

槍を貸してくれ。」


ヒドラの槍を渡す。


ヒース

「感謝する。

攻撃のタイミングを合わせてくれ。

一撃で決めるぞ。」


テオ

「わかりました。

みんなタイミングを合わせて魔法攻撃だ!

壺を狙え。」


ヒースが大きな声でカウントダウンを始める。


ヒース

「10、9、8、7、6、5、4、3、2、1

撃て!!」


魔法が殺到する。

壺には到達しない。

しかしスライムの体が大きく抉れる。


杉山

「決める!

流星槍!!」


先ほどとは全然違う威力。

槍がスライムの体内を突き進み、

壺を貫通する。


杉山

「やったか!?」


壺を割られたスライムは体を保てず、四散する。大量の溶解液が辺りに飛び散る。

その巨体が弾けとんだのだ。

逃げ場はない。

そこにいた全員が溶解液の被害を受ける。

服がボロボロになっていく。


テオ

「ひどい状態だな。」


ヒース

「だが、倒せた。

君たちの協力に感謝する。

後は残存するスライムを処理すれば任務は終了だ。」


テオ

「了解です。

槍も無事で良かったですよ。」


その後、もう一泊して残存スライムの掃討を実施。ヘーデン王国でのスライム大量発生事件は無事解決出来た。


今回の事件でブラックキャットの働きは高く評価され、冒険者たちからも、次のBランク候補として認識されるようになった。

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