武器のレンタル

ある日、テオさんが営業を終えた満腹亭にやってきた。

テオさんは時々ランチを食べに来てくれているけど、時間外に来るのは珍しい。



「どうしたんですか?」


テオ

「少しお願いしたいことがあってね。

今、時間いいかな?」


「大丈夫ですよ。

どうぞ。」


空いている席に案内する。


テオ

「実はアキラ君が持っている武器を貸して欲しいんだ。」


「どういうことですか?」


テオ

「少し長くなるけど説明するね。」


僕は軽くうなずく。


テオ

「パエルモとヘーデン王国を結ぶ街道にスライムが異常発生してね。ヘーデン王国内だったので、パエルモ側は静観していたんだけど、ヘーデン王国が討伐に失敗して、リズムリア王国に協力を要請してきたんだ。」


「えっ?

スライムの討伐に失敗したんですか?」


テオ

「にわかには信じがたいけど、事実のようなんだ。」



この世界のスライムは嫌われ者だけど弱い。決して軍が負けるような相手ではない。

動きは緩慢だし、特殊な攻撃もない。

ウニウニしている体のコアを破壊すると倒すことの出来るモンスターだ。

ただ、体が溶解液で出来ているので、使った武器や防具が劣化してしまうのだ。しかも倒しても魔石が手に入るだけで売れる素材は何もない。

だから、冒険者は嫌い、基本的には戦闘をしたがらないモンスターなのだ。


テオ

「結局、パエルモ伯爵の騎士団と冒険者が討伐を行うことになったんだ。」


「でもスライム相手だと冒険者は集まらないんじゃないですか?」


テオ

「冒険者ギルドは魔法の使える冒険者に限定をして募集を行っているんだ。そして、その魔法使いたちの護衛役に俺たちブラックキャットが指名されたのさ。」


スライムによる装備の劣化対策のために、接近せずに攻撃できる魔法使いを集めたってことだね。そして接近戦になった場合のリスク回避にテオさんたちを配置する訳か。

ロイズさんらしい安全策だね。


テオ

「複数のパーティーから魔法使いが集まるんだ。俺たちもカッコ悪いまねは出来ない。

なにせ、『翼竜の一刺』の後継者としての宣伝も兼ねているからね。

そこで、アキラ君への依頼になるんだ。

通常はスライムと戦う場合は壊れてもいい廃棄間近の武器を使うんだけど、今回はカッコ悪いところは見せられない。

レンタル料は払うから、スライムの溶解液に耐えられるような武器を貸して欲しいんだ。」


テオさんが提示したのは今回の日当の半額に相当する金額だった。

ロイズさんの差し金みたいだし、断る理由もない。


「いいですよ。

でも、武器の出所はばらさないでくださいね。」


テオ

「もちろんだ。

借りたいのは長剣、槍、斧、ナイフなんだが、何かあるかな?」


「ちょっと待ってくださいね。」


少し考えながら武器を取り出す。


「ここら辺がいいかな。

剣は思い入れがあるから、絶対持って帰って下さいね。他はそんなに気にしなくていいけど。」


テオ

「これは・・・。」


「剣はガンズ工房で作ってもらった特注品なんだ。自動修復がついてるから、よっぽどのことがないと壊れないよ。

槍はヒドラの槍って名前でこれも自動修復つきだね。他にはこれと言って特徴のない槍だよ。

斧はエナジーアックスって名前。魔力を消費して刃が発生するんだ。通常は刃がないから劣化も関係ないはず。

ナイフはトンボナイフって名前。これは魔力を消費して飛ぶ刃を出せるんだ。接近せずに攻撃できるから便利だと思うよ。」


テオ

「どれも素晴らしい武器だ。

こんなの見たこともないよ。

大切に使わせてもらうよ。」


テオさんは満足そうに帰っていきました。

大丈夫かな?

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