裁判

ハロルド

「事実と異なるね!」


裁判官

「どこが違うのか申してみよ。」


ハロルド

「そもそも、あの土地と建物はアキラさんのものです。ちゃんとウェルチ不動産から購入していますからね!

所有権を争っているんじゃなく、不法占拠するアイツたちに出ていくように言っただけだ!」


ハロルドさんが最初からヒートアップしている。


裁判官

「この裁判は土地と建物の所有権を決めるものではない。傷害事件の審議を行うものです。その点を理解するように。

捜査官の説明内容に相違はないね。」


「ありません。」


裁判官

「よろしい。

それでは、双方、意見を述べてください。

まずはモーブ氏側から。」


モーブ

「そもそも、私たちはあの場所に先にいたんだ。後からそちらの2人が難癖をつけるために乗り込んできたんです。

彼らが私たちのところに乗り込んできた。

その時点でどちらが先に仕掛けたのかは明白でしょう。」


ハロルド

「ふざけるな!

不法占拠しておいて!」


裁判官

「静粛に。

勝手に発言はしないように。

それが守られない場合、退廷を命じますよ。」


「すいません。」


なんか、裁判官の印象が悪くなってる気がする。


裁判官

「それではアキラ氏側の意見を述べてください。」


「はい。

あの、その、、、あそこは僕がレストランにする為に買った物件です。

彼らが不法占拠するから工事が出来ずに困っていました。

出ていくように要請したら、集団で威圧してきて、、、

武器を抜くそぶりを見せたので、自衛のために投げました。

こちらが手を出さなければ、ハロルドさんが斬られていました。」


裁判官

「よろしい。

双方、相手の意見に対して反論はありますか。まずはモーブ氏。」


モーブ

「彼の発言は嘘だ。

彼が投げた私の友人は武器を持っていなかった。持っていない武器をどうやって抜くと言うんだ?」


裁判官

「今の反論に対して何かあるかね。」


「・・・持ってたんです。」


裁判官

「双方、証拠はありますか?」


モーブ

「ケガをした彼を治療した医師の証言がある。」


そう言ってモーブは1枚の文書を裁判官に差し出した。

裁判官はそれを一読する。


裁判官

「なるほど。

アキラ氏は何か証拠はありますか?」


絶対ウソだよね。

だいたい、あんなに包帯巻いた医師ってことはグルじゃん。


「その医師もグルなんでしょ。

その包帯を取って見せてよ。

そんなあからさまなウソの包帯を巻いた医師の証言なんてアテにならないでしょ。」


裁判官

「包帯を取れますか?」


モーブ

「痛くて取れません。

ケガ人にムチ打つ行為は許されないだろ。」


ハロルド

「ウソの包帯を巻いているから取れないんだろ!さっさと取れ!

どちらがウソつきかハッキリさせてやる!」


「だまれ!」


モーブの隣にいたおじさんが一喝した。


おじさん

「私はドコゾーノ男爵である。

その私が宣言する。

我が息子モーブは嘘偽りを申しておらん!

そのどこの馬の骨かもわからん男とモーブのどちらを信用するかなど、一目瞭然だ。」


モーブの父親であるドコゾーノ男爵が空気を一変させた。


ハロルド

「アキラさんはBランク商人です。

その発言は十分信用に値します!」


Bランク商人はけっこう発言力があるのだ。

前にギルドマスターのオリバーさんに教えてもらったからね。

男爵とかと対等にやりあえる力が与えられるって。


どうだ!と胸を張るハロルドさん。

肩書き勝負なら負けていない。


ドコゾーノ

「ふん、その程度で勝った気か。

これだから成り上がりの平民は。

裁判官、ここにアクダイ伯爵の書状がある。

これを読んでくれ。」


貴族はグループを作る。

おそらくドコゾーノ男爵の所属するグループのリーダーなんだろう。

立場的にはパエルモ伯爵とかと同じなんだろうね。

Bランク商人も伯爵には勝てないらしいからね。それを見越して用意していたのかな。

悪知恵だけは働く連中だな。

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