取調室
「厄介なヤツにからまれたな。」
あの後、僕とハロルドさんは衛兵たちに逮捕されてしまった。
衛兵たちに連れられて僕たちは衛兵たちの詰所に到着した。
一緒に詰所に来たモーブたちは早々に解放され、僕とハロルドさんだけが留置場に残された。
どうしよう?
その気になれば出られるけど、そしたら脱獄犯になっちゃうのかな?
さすがにそれはまずいよね。
こういう時に頼りになりそうなのはパエルモ伯爵だけど、連絡も出来ないし、すぐには来られないからね。
しばらく待つと僕たちは取調室に連行された。
そこで言われたのが、
「厄介なヤツにからまれたな。」
だった。
捜査官
「あの男は度々この手のトラブルを起こしているからな。」
僕
「どうにかならないんですか?」
捜査官
「それは君次第だ。
身分証を見せてくれるか?」
僕
「商人ギルドのギルドカードでも大丈夫ですか?」
捜査官
「もちろんだ。」
僕がギルドカードを差し出すと。
捜査官
「ほう、
Bランク商人のアキラさんですね。
あの男も相手を選ぶべきでしたね。
Bランク商人でしたら、無罪を勝ち取れるかもしれませんよ。」
僕
「どういうことですか?」
捜査官
「そうですね。
まずは当時の状況をお教え頂けますか?」
僕とハロルドさんは今日の出来事を説明した。
捜査官
「身元の確認が取れましたので今日は帰って頂いてけっこうです。
2日後、裁判が行われます。
裁判所に出廷してください。
その間に商人ギルドや懇意にしている貴族などに弁護を依頼してください。
今回、どちらが先に手を出したのかなんて、当事者の主張しかありません。
その時にものを言うのが地位です。
モーブは男爵家の嫡男。
おそらく父親のドコゾーノ男爵を連れてくるでしょう。アキラさんがBランク商人だと知れば、寄り親にあたる貴族を連れてくるかもしれません。そうなるとBランク商人と言えど援護射撃がないと勝てません。
とにかくネームバリューのある方を連れて来てください。
なんとか、あの小悪党を懲らしめてください。」
僕
「僕に頼らず捜査官の権限でどうにかならないんですか?」
捜査官
「残念ながら。
貴族と平民ではまともな訴訟にならないんです。もちろん、明確な証拠があるような状況ならともかく、目撃証言しかない場合は、我々に出来ることはほとんどありません。
捜査官とは言え、平民ですからね。」
僕
「そうなんだ、、、
ちょっと考えてみます。」
捜査官
「よろしくお願いします。」
ようやく僕らは解放され、宿に戻った。
そして2日後。
僕とハロルドさんは裁判所に出廷した。
中央の高い場所に裁判官らしいおじさん。
裁判官の左手側に僕とハロルドさん。
対面にモーブたち。
モーブたちは貴族らしい格好をしており、以前のごろつき感は無い。しかも、腕や足、頭などに包帯を巻き、ケガをしているアピールをしている。
裁判官
「それでは、2日前に発生した傷害事件について裁判を行う。
なお、裁判において虚偽の報告を行うことは処罰の対象となる。その点を理解し、真実のみを語るように。
まずは双方、名前を名乗ってください。」
モーブ
「ドコゾーノ男爵の嫡男、モーブである。」
僕
「商人のアキラです。」
裁判官
「よろしい。
それでは捜査官より状況を説明してください。」
捜査官
「2日前の夕方。
モーブ氏とアキラ氏の両名は所有権を争っている物件において対峙。
双方が所有権を主張し、対立した。
その後、
モーブ氏の主張によれば、
アキラ氏側が手を出してきて、モーブ氏の友人を投げ飛ばした。それに巻き込まれ、モーブ氏を含む5名が負傷した。
次にアキラ氏の主張によれば、
モーブ氏側が大人数で武器に手をかけてハロルド氏に迫ってきた為に、自衛のため投げた。
両者の主張はこのように対立しております。」
裁判官
「双方、今の説明に相違ないか?」
モーブ
「相違ありません。」
あぁ、裁判始まっちゃったよ。
どうしよう?
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