メリルの頭痛

僕は手に入れた鎧を出した。


「これなんですけど。」


ガンズ

「見るぞ。」


ガンズさんが鎧をじろじろ見る。

そして、無言のまま横に回す。

受け取ったメリルさんも鎧を確認していく。


メリル

「これは!?」


「どうしたんですか?」


メリル

「なんて鎧を持ち込むんですか、、、

凄まじい性能です、、、」


ガンズ

「この鎧のどこに不満があるんだ。」


「見た目かな。

ちょっと派手過ぎないですか?」


ガンズ

「それだけか!?」


「それだけだけど?」


ガンズ

「メリル、、、後は任せた。」


メリル

「任せないでください。

こんな鎧、私の手におえません!」


ガンズ

「わしの手にもおえんわ!」


「別に大きく性能を変えてって話じゃないよ。派手過ぎるから地味な見た目にして欲しいだけだよ。

無理かな?」


ガンズ

「・・・」


ガンズさんは答えるつもりがないらしい。


メリル

「結論から申し上げると、出来ません。

この鎧は私たちが手を出せる領域ではありません。完成され過ぎています。

残念ながら手の出しようがありません。」


「そんなに?」


メリル

「そんなに、です。

私たちがどう干渉しても跳ね返してしまうでしょうね。」


「は~、仕方ないか~。

これじゃあ派手過ぎて僕に似合わないんだよね。うちの従業員にあげるって言っても受け取り拒否されるし。」


ミトン

「そんなに凄いんですか?」


メリル

「オリハルコンより硬度の高い、謎の金属で作られているわ。

それだけ硬いのに、物理攻撃を低減する特殊効果付与されているし、魔法攻撃なんかはほとんど吸収して回復になる。

誰が装備しても良いようにサイズも調整してくれる。万が一損傷しても自動で修復される。防具職人の夢を詰め込んだような鎧よ。」


ミトン

「そんな夢のような鎧が存在するなんて、、、」


「あっ!そうだ。

この鎧、買いませんか?」


ガンズさん・メリルさん

「買わん!(買いません!)」


息ぴったりで拒否された。


メリル

「こんな神話に出てくるような鎧を所持することは出来ません。

そもそも値段もつけようがないので、売買も成立しません。

こんな鎧を持っていることがバレれば警備費用がいくらかかるかわかりません。」


ガンズ

「あまり、この鎧は世に出さん方がいいな。

変な気を起こす人間が出てきてしまう。」


メリル

「この鎧のことを知っているのはどなたですか?」


「うちのお店の従業員と今いるメンバーだけです。」


メリル

「それでしたら大丈夫でしょう。

下手に他の工房などに見せていたら大変なことになっていましたよ。」


「なんか、厄介な鎧ですね。」


ガンズ

「・・・」


メリル

「誰が作ったのかはわかりませんが、これほどの性能を持ちながら厄介呼ばわりされるとは、製作者としては泣きたいでしょうね。」


「そういうもんなんですね。」



仕方ない。

諦めよう。

せっかくガンズ工房まで来たので、僕の在庫になっている武器や防具に使える素材を売却していく。

ガンズさんは腕が良いから、他の職人さんでは加工できないってことで売れなかった素材も買ってくれる。

在庫整理になるから有難い。

僕の資産はまた増えちゃうけどね。


ついでにエリオさんの武器を買って帰ろう。

元々モルトさんとエマさんは戦うつもりゼロだからね。武器も必要ないでしょ。

エリオさんはエマさんを守る為に、ってことでいざと言う時は戦うつもりだ。


「日常使いも出来る布手袋みたいな武器ってありますか?」


メリル

「非常にピンポイントな要望ですね。

丈夫な布さえあれば作れますよ。

ただ、それほど攻撃力は高くならないと思いますけど。」


「じゃあ・・・これで。」


ダンジョンで倒したモンスターからドロップした布を差し出す。

けっこう丈夫そうだからね。


メリル

「また見たことのない布を、、、」


メリルさんは頭を抱えながらも引き受けてくれた。

パッと見はただの白手袋。

でもBランクでも十分通用する攻撃力になった。

作った本人が、

「なんで手袋でこんな攻撃力になるの??」

と頭を抱えていたけど、気にしないでおこう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る