ふらい屋オープン

そして翌日。

いよいよふらい屋のオープン初日。

僕らも満腹亭を営業しているので、アイラさんだけ派遣して、僕を含め、残りのメンバーはいつも通り仕事をしている。


それでもみんな気になっているみたい。

この冬は接客や調理の練習に付き合っていたからね。心配なんでしょう。


満腹亭は最後のお客さんを見送り、本日の営業は終了。じゃんけんで勝った3名が様子を見に行くことに。

結果、僕、マユラさん、ルーシュさんに決まりました。


屋台を出している場所に行くと、

『満腹亭監修 ふらい屋』という真新しい看板が見えた。

屋台には購入するお客さん。


良かった~。

ちゃんとお客さんはいるみたい。


僕はアイラさんに声をかけた。


「どんな感じ?」


アイラ

「売れ行きは悪くない。

だが課題はいくつか出てきたな。

今後改善が必要だろう。」


課題1

油の管理。

IHで温度を一定に保つ、なんてことは出来ない。火を自分たちで調整する必要がある。

しかし忙しくなると管理がおろそかになり、温度が上がり過ぎたり下がり過ぎたりしてしまうらしい。そのため、仕上りの色合いにムラがあったそうだ。

更にまとまりが悪く、油の中でぼろぼろになってしまうコロッケもあった。そうすると一気に油が汚れてしまうため、カスの掃除に時間がかかってしまうようだ。


課題2

客対応。

1人1個という訳ではない。注文を把握してお金の精算をしないといけない。

ただ、この世界の識字率は低い。もちろん孤児の彼女たちは文字をほとんど読めないし、計算も苦手だ。注文内容が少し複雑になると、途端に対応出来なくなる。

そこら辺の対応力が必要になる。



課題は出てきた。

それはある意味予想通りだ。

これから解決していけばいい。

そして、それは彼女たちが考えることだ。

こちらから答えを与えてばかりいては成長がない。これからもずっと僕たちがサポートを続ける訳じゃないからね。

自分たちで考え、自分たちで解決する能力を身に付けてもらいたい。


せっかくなので僕たちもコロッケとフライドポテトを買って、お店に残って片付けをしてくれているメンバーのお土産にした。

味はまぁまぁ。

正直練習の時の方が美味しかったかな。

揚げ油が少し焦げ臭くなっているんだろうね。それがコロッケの衣に移っている。

まぁ、今後に期待です。



その日の夜。

アイラさんが帰ってきて、様子を教えてくれた。

初めてお金を稼いだこと。

それもけっこうな額だ。

今日店頭に立っていないメンバーはそれで少し浮かれてしまったらしい。

アイラさんが喝を入れてきたらしい。


アイラ

「この程度で浮かれるな。

今日の出来ではすぐに客が来なくなるぞ。

今日、客がいっぱい来たのは満腹亭の看板と物珍しさのおかげだ。

味は練習の時と比べたらひどいものだ。

あれではすぐに飽きられる。

飲食店の成功と失敗を分けるのはリピーターを獲得出来るかどうかだ。

今のままでは無理だ。

今日店頭に立ったメンバーを中心に対策を考えるんだ。

すぐに出来る対策もあるはずだ。」


そこから店員役の4人は話し合ったらしい。

明日、彼女たちがどんな工夫をするのかよく見てあげて欲しい、と明日担当のマユラさんにお願いしていた。



結局、

まずは味を優先しようということになったらしい。どれだけ効率良くお客さんに対応出来ても、美味しくなければ意味がない。少し待たせてしまっても美味しい物を提供する。

油の温度や状態は都度確認するし、一気に入れると温度が下がるので、入れる数量を制限する、などなど。

そういう判断をした、とマユラさんから報告を受けた。


僕としても、それでいいと思う。

やっぱり美味しさが最優先。

うちのお店でそういうことを学んでくれてたのなら嬉しいな。

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