バカな客

冒険者

「おかわりくれよ。」


アリエッタ

「おかわりは有料になります。

ビーフシチューは5ウォンカ、揚げパンは3ウォンカです。

どうされますか?」


冒険者

「ぼったくりじゃねぇか。

余ってるならただでくれよ。」


アリエッタ

「あのね~、

森の中と街中で値段が違うのは当たり前でしょ。手間がかかってるんだから、高くなるわよ。」


冒険者

「でも持って帰るのも手間だろ。

その手間を省いてやるんだから、手間賃が欲しいぐらいだぜ。」


アリエッタ

「バカじゃないの。

邪魔だからどっか行って。」


冒険者

「おいおい、客に対してなんて態度だよ!」


アリエッタ

「お客様っていうのは、ルールを守って、ちゃんとお金を払ってくれる人のことを言うの。あなたたちは客じゃなくて、ただのたかりよ。」


冒険者

「なんだと!」


冒険者3人組が声を荒げる。


別の冒険者

「お前たち、止めないか!」


言い争うアリエッタさんと冒険者を止めに、別の冒険者が入ってきた。


別の冒険者

「彼女が困ってるだろ。もう止めるんだ。」


アリエッタさんのことをチラチラ見ている。

争いを止めたいというよりも、アリエッタさんに気に入られたいって感じが漏れまくっている。こちらもおそらくEランクかな。


まず、数的不利な状況に飛び込んでいくのが無謀だ。しかも圧倒的に強い、とかなら問題無いけど、おそらくドングリの背比べ。

3対1なら負ける。そんな相手に女の子に良いところを見せたいだけで顔を突っ込むのはあまりにも無計画。

本当に助けたければ、人数を集めてから介入するか、ギルド職員を呼んでくるかである。


冒険者

「てめえ、邪魔すんじゃねぇよ!」


別の冒険者

「お前たちこそ、彼女の邪魔をするな!」


冒険者

「なんだと! やんのか!」


冒険者が肩を突き飛ばす。

尻餅をついた仲裁に入った冒険者。


アリエッタ

「喧嘩するなら他所でやって。

邪魔よ。」


冒険者

「なんだと!」


既にヒートアップしている冒険者はアリエッタさんに掴みかかろうとした。

だが、のろまな冒険者に捕まるアリエッタさんではない。

サッと避けて、腹に蹴りを入れる。


冒険者

「うっ」


腹を押さえて、うつ伏せに倒れる冒険者。

もう1人の冒険者がアリエッタさんを殴ろうとする。だが、当たる訳もない。

アリエッタさんは冒険者の拳を華麗にかわし、そのまま1回転して裏拳を放つ。


冒険者

「オゴッ」


ドサッ

あごを打ち抜かれ、倒れる冒険者。


冒険者

「て、てめぇ!」


残った1人が剣を引き抜く。

剣先をアリエッタさんに向ける。

完全にやり過ぎだ。

そんなことは許さない。


ドサッ


冒険者

「えっ?」


冒険者は足元でした落下音に驚き下を見る。

落ちているのは自分の右手と剣。

右腕を確認すると右手首から先が失くなっている。


冒険者

「あっ、あ、あ、あぁぁぁぁ~!?」


ようやく状況を認識した冒険者がパニックになる。

剣を抜いたのが悪い。

剣を抜いたんだから、斬られても文句は言えないでしょ。


その場にいた全員が何が起こったのか見えていなかった。だが、アリエッタだけは見えなかったが正確に理解していた。


アリエッタ

「早く手当てしないと死んじゃうよ。」


腹を蹴られてうずくまっていた男が手首を斬られパニックの男のところに駆け寄る。

そこから止血をしたり、ポーションを飲ませたり、、、

冒険者たちが持っていたポーションでは足りなかったため、今日狩った獲物を譲ることで他のパーティーからポーションを融通してもらった。


なんとか一命は取り留めたが、体の部分欠損を治療できるほどの高級品を持っているはずもなく、その冒険者の右手は失われたままだ。


当然ではあるが、僕とアリエッタさんにはおとがめなし。逆にギルド職員さんは平謝りだった。彼らのやった行いはギルドが雇った料理人から強盗行為を目論み、返り討ちにあったという認識だ。

冒険者ギルドへの敵対行為にあたるのだ。誰も庇ってはくれない。


後日談だけど、街に帰ったら、事情を聞いたロイズさんが慌てて謝りに来てくれました。

もちろん被害はなかったから問題無いんだけどね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る