冬の森
森の中の少し開けた場所をキャンプ地に決定。冒険者たちはリアカーを停め、テントを用意していく。
テントは密集させている。
その方が守りやすいからだ。
風除けになるってのもあるらしい。
キャンプ地にはギルド職員たちとキャンプ地の防衛を役目とする冒険者が残り、他の冒険者たちは森の中に入って行った。
僕らは当然キャンプ地に居残り。
僕らは晩ごはんの準備をしよう。
今日の晩ごはんはビーフシチューと揚げパン。冬の森は寒いからね。熱々のものを食べてもらいたい。
ビーフシチューは塊肉がドーンと入ったタイプだ。お腹を減らした冒険者たちでも満足できるようにボリュームたっぷりに仕上げる。
パンは揚げパン。マジックバックの存在を隠したまま、温かいパンを食べてもらうための作戦だ。なにせ寒いから、すぐに冷めてしまう。
まずは具材のカット。
野菜もお肉とバランスをとるために大きめに切る。じゃがいも、ニンジン、たまねぎのオーソドックスなメンバーだ。
デミグラスソースは持ち込みです。
さすがに森の中でゼロから作る訳にはいかないからね。
早々に仕込みは終わって後は食べる直前に仕上げるだけ。
アリエッタ
「準備はオッケーだね。」
僕
「アリエッタさんはビーフシチューの盛りつけをお願いね。僕はパンを揚げるから。」
アリエッタ
「晩ごはんまでしばらく時間があるけど、どうする?」
僕
「せっかくだし、森の中を探索してみる?」
アリエッタ
「でも鍋を置いていくのはまずいんじゃない?」
僕
「大丈夫だよ。僕の分身置いていくから。」
僕は禁術『万華鏡』で分身を出した。
じゃあ鍋の番、よろしく。
ボゥもいるから大丈夫でしょ。
アリエッタさんと一緒に森に入っていく。
冬の森。
所々に雪がある。
葉が落ちた木も多く、少しさみしい景色だね。
アリエッタ
「あんまり冬の森には来たことなかったけど、静かでいいね。」
僕
「冒険者やってる時に入らなかったの?」
アリエッタ
「低ランクの冒険者は冬に森には来ないよ。
危ないからね。
森に入る人が少ないから、モンスターも飢えて狂暴になるの。
今ならどうってことないけど、当時は無理だったな~。」
僕
「なるほどね~。
だから冒険者は森に入れず、収入が減っちゃうわけか~。」
その後もアリエッタさんと他愛ない話をしながら森を散策。
特に何かある訳じゃないけどさ。
楽しくおしゃべりしながら散歩するのはいいね。
散歩を終えてキャンプ地に戻ってきました。
いつでも夕食を提供出来るように準備を進めていく。日没が近付くと冒険者たちがどんどん帰ってきた。
僕はパンをどんどん揚げて、いい色合いになったら油から出してきな粉をまぶす。
冒険者たちはパンとビーフシチューを受け取って食べている。
みんなから好評です。
お肉ごろごろビーフシチューは食べ応えもあるし、甘い揚げパンも疲れた体に染みる。
なにより、寒い森の中で熱々のご馳走が食べられることはなによりも有難いみたい。
そもそも満腹亭はランチとしては少し高め。Eランクの冒険者だとなかなか食べられない値段だ。
みんなが喜んでくれている姿を見るのは嬉しいね。たとえ相手がむさ苦しいおっさんでも。
冒険者たちが夕食を食べながら話をしているのを聞いていると、やはりこんなところまでジャイアントスノーラビットが降りてくるのは異常らしい。もしかしたらタカート山で異変があり、その影響ではないか、と推測していた。タカート山にはうちのモンスターたちがしばしば狩りに出かけているから、少し心配だね。
まぁ、うちのモンスターたちの脅威になるほどのモンスターはなかなかいないけどね。
もうそろそろ夕食タイムも終了かな、というタイミングで声をかけてきた冒険者たちがいた。3人組の男たちだ。まだまだ若いし、装備もいまいちだからEランクかな?
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