便利な結界
ダンゴムシの倒し方はわかった。
と言うか、全貫通の特殊効果があるスプーンなら全てを無視して倒せるけど、それをやると謎の声に叱られそうなので、ちゃんと考えて攻撃していく。
別にダンゴムシの砲弾を跳ね返さなくても、反射出来ない属性の攻撃なら有効なのだ。
まずは物理攻撃が有効なダンゴムシを狙う。
砲弾を見てダンゴムシを区別し、接近してメイスで殴る。硬いけど倒せないほどじゃないかな。
僕
「乾坤一擲」
折角なので、スキルを試してみる。
ブシャッ
ダンゴムシの肉体が弾け飛ぶ。
グロい。。。
もう止めておこう。
威力が強過ぎる。
万が一、間違ってこれを反射されたら大変なことになるからね。
地道に通常攻撃で殴っていこう。
順番に殴って倒していく。
少し時間はかかったけど、4体とも倒せた。
残りは魔法しか効かないダンゴムシだけ。
もう物理反射は気にしなくていいからね。
魔法をばらまきまくる。
魔法抵抗力も高いね。
でも攻撃手段が単調だから脅威はない。
時々飛んでくる砲弾を避けながら魔法を放つ。
終了。
『見事だ。
護る為の力を授けよう。
何を護りたいのか見定めよ。
結界創造だ。
お前には生殺与奪の選択権が与えられる。
見誤るな。
その選択が未来を紡ぐ。』
与えられたのは『結界創造』というスキルだった。一般的な結界魔法も持ってるし、禁術にも結界魔法はあった。でも『結界創造』はかなり異質な結界魔法だ。
結界に様々なルールを設定出来るのだ。
単純な大きさや強度だけじゃない。
物理攻撃だけを防ぐ結界。
モンスターは入れない結界。
60歳以上の女性しか入れない結界。
とにかく多様な設定が出来る。
これは便利かもしれない。
例えば満腹亭の2階3階は住居になっているから、僕の許可なく入れないとかも可能だ。
街全体を包んでモンスターは入れない、ただし従魔は除く、みたいな設定にすれば安全な街を作ることが出来る。
僕があんまり戦わないから使う機会は少ないけど、自分の攻撃だけは通す結界なんてことも可能だ。
もしかしたら料理にも使えるかも。
ヨーグルトの水気を切る時に水だけを通す結界を使うとか。
焼き肉をする時に煙を通さない結界とか。
後、設定を細かくすれば熱を通さない結界でアイスを包んで、その上から衣を着けて揚げれば、アイスの天ぷらも簡単に出来る。
玉子に70度以上の熱は通さない結界を張れば失敗せずに温泉玉子が出来るかも。
発想は無限に広がりそう。
これは面白い。
色々試してみよう。
僕が結界創造のスキルを手に入れて、マヒルさんと約束をしていた5日間は終了した。
その日の夜、宿屋にて。
僕
「約束の5日が経ったけど、これからどうするんですか?」
マヒル
「折角だから、この世界を少し見て回ろうかと思ってる。
最初は南下してジプート連邦にあるダンジョンを目指そうかな。そっちだと冒険者も多いみたいだし。冬場は南に向かう方が乗り合い馬車も便が多いみたいなの。」
僕
「そっか~。
気をつけて行ってくださいね。
この世界は危険がいっぱいですから。」
マヒル
「ありがとう。
あのタイミングでアキラ君に会ってなかったら私の人生、あそこで詰んでたからね。
感謝してもしきれないよ。」
僕
「たまたまタイミングが合っただけだよ。
僕について来ることを選んだのはマヒルさんの選択だし。
これからも死なないように選択を間違えないでくださいね。」
マヒル
「ありがとう。
そのうちアキラ君のお店にごはん食べに行くよ。リズムリア王国のパエルモだよね。」
僕
「そうです。
是非、食べに来てください。
1回ぐらいは無料サービスしますよ。」
マヒル
「楽しみにしとくね♪」
そんな会話を交わしながら、マヒルさんとの最後の夜は更けていった。
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